第2話 知識を武器に学園授業を効率攻略

 翌朝、ワシは前日と同じく早起き。ストレッチと軽い筋トレ、呼吸法を試す。前世で教わった「魔力循環を意識した深呼吸」を導入してみると、すぐに全身がじんわり暖かくなる気がする。14歳の身体は伸びしろが半端ねえ。50歳の頃は朝起きるだけで腰が痛くなったが、今は軽くスクワットしてもなんの苦もない。


 教室に行くと、クラスメイトたちが雑談している。ワシは席につきながら前世で得た魔物知識をメモしておく。いずれくる実習で役立つだろう。近くでマイロが興味深そうにノートを覗き込んでくる。


 「バル、そのノート何書いてんだ?」

 「ちょっと魔物の生態整理してんだよ。弱点や生息場所、攻略法とか。将来困らないようにな。」

 「へえ、すげえな。2年生でそこまでやる奴、見たことねえよ。お前どうしたんだよ、まじで?」


 マイロは首をかしげるばかりだが、気にしない。昔のワシとは違うことを周りに示し始めたんだ。そうして少しずつ存在感を高め、いざというとき周りをリードできるポジションに着きたい。


 最初の授業は魔力制御の応用編だ。先生が「魔力粒子を安定させるには精神統一が肝心」と解説しているが、ワシには別のアプローチが頭に浮かぶ。呼吸法や筋肉の意識だけじゃなく、視覚イメージを使うと効果的だったはずだ。前世で偶然見かけた達人が、魔力を一本の糸状に思い描き、それを体内で巻き取るイメージでコントロールしてたんだ。


 授業後、ワシは廊下で同級生のリールを見かける。彼女は魔力操作が天才的で、前世では在学中にNどころかMクラスまで行きかけてた化物だ。今はまだそこまで突出してない時期だが、周囲の期待は大きいはず。


 「よ、リール。最近どうよ? 魔力制御、楽勝って顔してんな。」

 リールはちょっと驚いたようにワシを見てくる。「あら、バル。あんた最近やたら元気じゃない。何か秘策でも見つけたわけ?」

 「まあな。強くなるために効率重視でいくことにした。適当にやってたって上には行けねえからな。」

 リールはクスッと笑う。「ふーん、いいじゃない。退屈な凡人より、そのほうが面白いわ。」


 才能者に一目置かれるには時間がかかるだろうが、もう笑われるだけじゃ終わらない。いずれ奴らを追い詰めるくらいに強くなってやるさ。


 昼休み、また食堂で栄養スープを頼む。おばちゃんに「もう一度同じやつを」「昨日より野菜増やして」と要求。こうした細かい工夫で体力と魔力資質を底上げする。マイロや他の連中は「バル、食にまでこだわってんのか…」と半ば呆れ顔。だが構うものか、ここで差がつくんだ。


 午後の武器基礎実習では木剣を使い、基本フォームの確認。前世で自己流だったフォームを正しい動きに修正する。地味な反復だが、知識があると吸収が早い。ハランド教官が「おいバルフォール、妙に安定感出てきたな」と褒めてくる。いいぞ、評価が徐々に上がるのを実感できる。こうやって周りの見る目が変われば、パーティ編成のときにも有利になる。


 放課後は自主練習。今回は軽く魔力を手元に集めて光を発生させる初歩魔法を試す。前世では習得に時間がかかったが、今はイメージが明確だから数回で成功。「ほら、簡単に光ったぜ」と独り言。近くを通ったナーナという魔法好きの女の子が驚いてる。「バル君、そんな魔法使えたっけ?」と聞かれるが、ワシは肩をすくめる。


 「ちょっとコツを掴んだだけさ。努力すればできるもんだな。」

 ナーナは感心した様子で「教えてくれない?」と来る。別にケチる理由もないし、人に教えることで自分も知識を再確認できる。


 「いいぜ。魔力を光として放つときはただエネルギーを出すんじゃなく、瞼の裏に白い光が走るイメージを強く持つんだ。呼吸を合わせれば安定する。」


 ナーナは「おお、なるほど!」と目を輝かせる。こうやって周りに貸しを作るのも悪くない。弱い奴に優しくすることで、後々味方になってくれたりする。人情味溢れる親分肌、いいだろ? 前世は余裕がなくて気遣いなんてできなかったが、今は違う。時間はたっぷりあるし、目標もはっきりしてる。


 夜、寮の自室でノートを見返す。今のところ順調に注目を集め始めている。次の大きなチャンスはやっぱり実習だ。確か来週あたりに、「2年生の魔物討伐実習」が予定されているはずだ。実戦形式でパーティを組み、森に出て弱いワイバーンを倒す行事だったか。


 前世ではこの実習で失敗して他生徒に笑われた記憶がある。準備不足で突っ込んで、魔物の弱点もろくに知らず、結局逃げ腰になって恥をかいた。だが今回は違う。そのワイバーンは音に敏感なはず。鈴や笛で注意を引いてから背後を突けば容易に倒せる。足元が弱点だったよな? 前世の痛い経験が全部武器に変わる。


 「弱者チームでも勝てる戦術を組めば、才能者にも勝るとも劣らない結果が出せるはずだな。面白くなってきた。」


 ワシはニヤリと笑ってペンを走らせる。パーティには当然、マイロのような普通の奴らが集まるだろう。才能者たちは互いに組みたがってるだろうが、ワシは弱者を率いても勝てるところを見せる。そっちのほうがウケるし、注目度も高まる。何より人助けにもなるだろう。


 ついでに小ネタとして、森の特性やワイバーンの警戒範囲なども思い出せるだけメモする。あの森には細い小道がいくつかあって、地形も把握しておけば戦略は練りやすい。自然の音でワイバーンの感覚が狂う場所もあったっけな。


 部屋のランプを消す前にワシは「明日は魔力測定とクラス別演習がある」と時間割表を確認する。今はZやYレベルだろうが、すぐにNなんか到達してやるからな。周りが呆れるくらいのペースで強くなってやるぜ。


 「よし、二度目の青春は順調だな。もっとやれる、やってやる。」


 ワシは布団に潜り込み、明日のイメージを膨らませる。ギャップで驚かせ、結果で黙らせる、この快感はたまらない。前世の平凡な日々が嘘みたいだ。若い身体って最高だな。


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