二度目の青春!? タイムリープやり直し人生! ワシの底力、見せてやるわ!
カンジョウ
「学院集大成編」
第1話 ブサイクな14歳再び、二度目の学園スタートだぜ!
気がつくと、ワシは見覚えのある安っぽい木のベッドに転がっていた。頭がズキリと痛む。何だよこれ、確かワシはあの時……いや、やっぱり夢か? ワシは前世で50年生きて、そこそこ苦労した挙句、魔物の巣穴に突っ込んで血祭りにあげられたはずだ。死んだあとの記憶なんてほとんどないが、確かにワシは死んだ。これだけは間違いない。
なのに、今ワシは14歳くらいの小僧の身体になっている。しかもこの木製ベッド、この安っぽいカーテン、外から差し込む朝日、そして窓の外には見覚えのある校舎。ここは「錬章院」って学園じゃねえか? ワシがガキだった頃に通ってた戦士・魔導士養成の学校だ。あの頃、ワシは凡庸な生徒に過ぎなかった。名を上げることもできず、「そこそこ頑張ってるけど大成しないヤツ」なんて陰口叩かれてたっけな。結局そのまま半端な冒険者になって、実力もランクも上がらないまま50歳過ぎまで粘って、最後はあっけなく死亡。
だが今はどうだ。鏡を見ると、そこには愛嬌のかけらもないブサイクな少年の顔が映ってる。目つきは悪いし鼻は団子っぽいし、前世も大概平凡だったが、やり直してもイケメンにはなれなかったらしい。まあいい。見た目なんて二の次だ。問題は、ワシの中身が50年生きたオッサンそのままであること。つまり、タイムリープしたってわけだ。年齢はたぶん14歳、学年は2年生だな。前世と同じ時点からやり直せるってことか?
「なるほどな。今度こそ最強への道を歩けるじゃねえか。」
ワシは独り言をつぶやく。前回の人生で得た知識はそのまま残っている。魔力制御のコツ、強敵に挑むときの戦略、体力を効率的に伸ばすトレーニング法、食事管理、各種アイテムの効果……50年分の経験が脳味噌に詰まってるんだ。若い身体にそれを活用すれば、今度こそNランクなんて序の口、A、いやもっと上だって夢じゃないだろう。S級なんて伝説だが、そう簡単に諦められるか。二度目の人生、やる気満々だぜ!
とりあえず着替えをしながら周囲を確認すると、この寮部屋は2年生用の個室。懐かしいというか、前は狭くて嫌だったが、今は妙に愛おしい気分だ。机には教科書やノートが雑然と置かれている。ふん、以前のワシは特に勉強熱心でもなかった。今回は違うぞ。最大効率で学んで、実力を伸ばしてやる。
寮を出て廊下を歩く。ちょっとがさつな歩き方になってないか? いいだろう、ワシはオッサンだ、別にお上品に振る舞う気はない。ただ、周りはみんな中学生くらいの年頃で、顔なじみも多い。その中にマイロという友人がいるはずだ。前世でもワシと同レベル程度の凡人だったが、人がいい奴だったな。
「おいバル、おはよう。何だか雰囲気変わったな?」
出た、こいつがマイロだ。短い茶髪でニコニコしてる陽気なクラスメイト。前世ではワシが自信なさげに応じてたが、今回は違う。
「おう、マイロ。気分がいいんだ。二度目の青春ってやつだな…いや、こっちの話だ。」
「何言ってんだバル、朝から妙なテンションだな。まぁいいけどよ、ホームルームに遅れるぞ。」
マイロは首をかしげるが、無視無視。今はワシの指針がはっきりしてるから気にしない。教室に向かう途中、才能ある天才型生徒がチラホラ目につく。リールって魔力操作が抜群の少女、ガルスって剣の才能に恵まれた少年。前世では彼らには到底及ばなかった。今回は彼らを追い抜いてやる。
教室に入ると担任のアマル先生が点呼を始めている。前世とまったく同じだ。長年教壇に立つ魔力制御のプロフェッショナルで、厳しいが的確な指導をする先生だ。ワシは席に座り、真面目な顔をする。前世は「まあまあ頑張るけど伸びない奴」って思われてたし、実際そうだった。今度は違うぞ、先生。
ホームルームが終わると、戦闘理論や魔力論、武器技術の基礎授業が始まる。教科書を開けば、昔はチンプンカンプンだった専門用語も、50年後の経験から見れば「なるほどな」と理解が早い。むしろ、教わる内容よりも前世で得た知識のほうが高度な場合もある。ここであまり早くから鼻を高くしても仕方ないが、適度に質問してアピールしてやるか。
「アマル先生、その魔力流出を安定させる場合、呼吸を整えるだけじゃなくて、腹筋周りの筋肉意識すると効率上がるって聞いたことあるんですけど、本当ですか?」
クラスが静まり返る。いつもは大人しく、黙って授業を受けてたバルが、突然そんな高度な質問するもんだから、みんな「は?」って顔だ。
アマル先生は驚いた表情だが、すぐに笑みを浮かべる。「ほう、よく知ってるわね。それは上級者が使うテクニックだけど、興味を持つのはいいことよ。」
リールがこちらをチラリと見て微かに笑う。ガルスは「バルがなんだって?」とマイロに小声で尋ねてる。いいね、早くも注目を引けたじゃないか。
昼休み、ワシは学食へ向かう。ここで前世で学んだ「栄養バランスの取れたスープ」を再現するよう食堂のおばちゃんに交渉してみる。普通の生徒はそんなこと考えもしない。ワシが「高タンパクな肉と野菜を細かく刻んで混ぜてくれ」と頼むと、おばちゃんは「珍しいこと言うねぇ」と苦笑いしながら対応してくれる。
マイロが不思議そうに「あんなもん頼んでどうすんだ?」と聞いてくる。
「身体作りは日々の積み重ねだ。特に魔力資質を上げたいなら、栄養補給は欠かせねえだろ。ワシは最短で強くなってやるつもりだからな。」
「へえ、バル、なんかやる気あるじゃん。前はそんなこと言わなかったのに。」
そうだな、前はただ流されてた。今回は違う。昼食後には自主的に訓練法をノートに書き出し、放課後には軽い体力トレーニングだ。14歳の身体は軽いし、反復運動でスキルがどんどん身につく。50歳のヨボヨボ体からすればパラダイスだぜ。
放課後、校舎裏の小さい広場で短剣の素振りをしていると、弱そうな一年生が上級生に絡まれていた。前世のワシなら「面倒ごとに巻き込まれたくねえ」と見て見ぬフリだったかもしれないが、今回は違う。せっかく二度目の人生だ、困ってる奴を助けるのも悪くない。
「おい、そこの上級生。そいつが何かやらかしたのか知らんが、証拠もねえのに責めるのは下品だな。」
ワシが割って入ると、上級生は「なんだお前、バルフォールか? 文句あんのか?」と睨んでくる。ふん、年下のくせに…っていうか今のワシは14歳。メンタルは50年生きたオッサンだ。こんな小僧にビビるわけないだろ。
「ああ、文句あるぜ。ガキ同士のトラブルで無実っぽい奴を苛めるのは趣味が悪いな。」
上級生は舌打ちして立ち去った。残された一年生は「ありがとうございます!」と頭を下げる。
まあ別に正義の味方面したいわけじゃないが、こうやって弱い者を助けるのは人情ってやつだ。ワシは面倒見が悪い方じゃないけど、今回は余裕があるからな。このくらいしてもいい。
寮に戻る前に、校庭で軽くストレッチしながら考える。ランク制度ではZやYが凡人レベルで、N以上でようやく魔物に対処できる力とみなされる。前世ではNにすらなかなか到達できずに苦労したが、今は知識があるから在学中にN突破は確実だろう。そこからM、L…そしてA、さらに上へ。Aクラス以上になると寿命も延びるって話だ。50歳で死んだ前世と違って、今度は長生きしてやる。
翌朝、早起きして軽くジョギングする。前世にはなかった習慣だ。14歳ならこれくらい楽勝だし、朝から身体を動かせば集中力も上がる。授業中に先生が解説する魔力の基礎理論を聞き流しながら、頭の中では前世で得た「実戦的な魔力活用法」と照合する。こいつは使える、あれは無駄だ、と効率を考えるだけでワクワクしてくる。
休み時間にガルスが話しかけてきた。「おいバル、最近妙にイキイキしてるな。なんかいいことあったのか?」
ガルスは剣才がある、前世で追いつけなかった存在の一人だ。ワシは肩をすくめる。
「さあな、ちょっと気合入れ直しただけだ。ワシは二度目の青春だと思ってるからな。」
「ワシって呼び方は相変わらず変だが…まあいい。頑張れよ。」
ガルスは呆れ顔で去っていくが、そのうち奴もワシの成長に驚くことになるだろう。
夜、寮の机でノートをめくりながら戦略を練る。在学中に一目置かれる存在になるためには、近々ある課外実習がチャンスだったはずだ。確か2年生で、森に出て弱い魔物をパーティで討伐する実習がある。前世ではそこで醜態をさらしたが、今回は違う。ちゃんと魔物の弱点を理解し、チームメイトに役割分担させて、結果を出すんだ。
「よし、やってやる。二度目の青春、ワシの底力、見せてやるか。」
ワシは拳を握りしめる。この新しい人生で、凡人から成り上がっていく。その初日にして早くも手応えを感じていた。
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