街中のダンジョンクリエイターやってるっす(後編)

さて、早速街中ダンジョンに訪れたんすけど…


「…なんじゃこりゃあああああああああああああああ!?」


到着したあたしの第一声がそれであったっす。

ダンジョン入口の前がゴミが散らかり、風紀が乱れるほど荒れていたっす…

もはや、ダンジョンのリメイクやカスタマイズどころじゃなかったすよ…


「あっ…クラリスさーん!!やっと来てくれましたー!!」

「アンジェさん…これ、どうゆう事っすか?」


あたしは、ダンジョン受付のアンジェさん(リーベルタール出身の庶子)に訳を聞く事にしたっす。

…ちょっと、怒りを抑えながらのゆっくりと聞く形で…っす。


「じ、実は…最近登用されたばかりの冒険者達が…」

「あー、はい。大方そいつ等の所為っすね」

「い、いえ…全部がそうじゃなくて…」

「大丈夫っすよ。向こうから来てくれたっすから」


あたしが言うように、どうやらダンジョンの溜まり場にしている連中が来てくれたっす。

…マスター、話が聞いていないっすよ。


「よぅ、嬢ちゃん…ここは危ないダンジョンだよぉ…」

「お兄さん達と一緒のパーティーに入らなふべらっ!?」


エミーさんの座右の一つ。


”下手に話しかける前に速攻で片付けろ”


どうやら、あたしの顔を知らない連中みたいだから、見せしめとして絡んできた男連中を全て倒しておくのが一番っす。

というわけで、「ふざけやがって!」の一声で向かってきた十数人の男達全員に喧嘩売りましたっす。



…と、ほんの三分ぐらいで終わったすけどね。


「ぐっ…すげぇつえぇ…」

「こう見えても、AAランクのエミーさんについて行ってる身であるっすからね」

「…エミーって、あの狩人チートのエミーリアかっ!?」

「そうっすよ。ちなみに、あたしもエミーさんの所属している令嬢ギルドの一人っす。クラリスって名前ぐらいは知ってるすよね?」


『ゲェー!?ダンクリチートのクラリスッー!?』


モブ男達が一斉に声を上げて土下座してきたっすけど…正直面倒なんすよねぇ…

ちなみに、あたしとエミーさんは一回街中のチート荒くれ達のギルドに本気で殴りこみをした事があるっすから、そん時に恐怖対象として覚えられたんすよね。

まっ、あたしは相手ギルド内の建物に”ダンジョン化”しただけっすけどね。


あっ、そういえば荒くれギルドの殴り込みで思い出して言い忘れてたっすけど…あたしとエミーさん含めて令嬢ギルドに所属している皆は魅了チートは自動的に無効化されてるんすよねぇ。


なんせ、アマンダの魅了チートによって”悪役令嬢ひがいしゃ”の称号を得てからは、あの女神クズをフルボッコしてくれた神様から恩恵を受けたので。


そのギルドにも魅了チートがいたけど、二度と使えない様に顔面フルボッコにした事があるっす。


「ハーレムチート(勇者及び聖女)死すべし、慈悲は無い」の座右で生きてきてるっすからね。


さて…今ボコったこいつ等を説教も大体終わったところで…


「あんたら、反省したと言うなら話が早いっす。早速ここの掃除を終わらせるっす。その後は街中清掃などのボランティアをする事っすね。…返事は!!」

「ラ、了解ラジャー!!」


ボコボコにされた屈強の男達はあたしの一声と共に、ダンジョン入口の清掃を始めてくれたっす。

…これで、少しは改善できれば良いっすけど、また悪い伝説うわさが流れるっすなぁ。


「さて、アンジェさん。ちょっくらダンジョン内に入るっすから。他の人は入れない様にお願いっすね」

「あっ、はーい。冒険者達にも伝えておきますー」


手短に返事したアンジェさんの後に、あたしはダンジョンの中に入っていった…




早速、ダンジョンの一階フロアの中心に立ったあたしは、クリエイターチートにある魔法パネルを手から出し、パネルの下に愛用しているポケコンとPDAを接続して使いながら、弄り始める事にした。


「―――アクセス。コード、オープン」


音声入力を行ったと同時に、魔法パネルから膨大なデータソースが流れ始め、解析し始めた…

元々前世では、情報処理学科の高校を卒業していたから…C言語などのベーシック基礎は学んでいたっすよねぇ。

ただ、時代の波合わず…スマートフォンやタブレットPCの時代に未だに黒画面主体のベーシックパソコンやポケコンによる情報勉強ばかりだったのが、今でも悔やむっす…


ただ、おかげでクリエイターチートの真髄であるバグ修正が見つけやすいという利点があるんすよね。

膨大な時間が掛かるっすけど。


ちなみに、一応苦手意識を持たない為にも、異次元接続チートを持つ商人系になった令嬢仲間から買ったスマートフォンもといスマホも扱う様にはしてるっすけど、今一使いづらいんすよねぇ…

便利な反面、使用しているアプリケーションソフトが欠陥すぎて使いもんにならない時は悲惨っす。

やっぱ、自分でソフトを構築して使い慣れた方が便利っす。


まぁ、全員がそんな技術が持てないから、便利で簡単な道具や能力を求めるんすよね…


さて、大方ソースの読み込みが完了出来たので、早速解読してみるっすけど…


「うわっ、何コレ…アイテム排出が偏ってるじゃん。敵の出現パターンもバランス崩しているし、何より魔物のパラメータが著しく可笑しい…ん?ちょっと待って」


あたしは思い立った時、ダンジョンのデータに不正アクセスした人物が居るかどうか確認する為、あたし以外にデータを触った人物がいないか調べ始めた。


何気にだけど…あたしと同じクリエイターチートを持っている奴はあまり少なくないんすよね。

むしろ、最近流行のチート能力だから、欲しがる子が多いんすよね。

ただ、殆どの子が良くあるテンプレ復讐者と言われる学校でいじめられっこ異世界トリップ者で、集団召還された際に生贄されて邪神と契約してダンジョンマスターになった系の子が多すぎるんす。


しかし、大抵そういった子の大半は長続きしないんすよね。


ダンジョンマスターの大半は”ダンジョンコアがあるから制限される”という枷で次第に動けなくなって、やがては動かなくなるか甘い感情が芽生えて自滅するかのどちらか…

そもそも、あんないじめられっこに復讐を完遂するのはほんの一割程度っすからね。


”人間性を捨てられる”外道は、ほんの僅かぐらいっす。


ただ、今回ここのダンジョンを弄った奴は…そんな感じでダンジョンコアを持たないクリエイトチート持ち…

つまりはあたしと同業者っすね。


しかし…若いというかなんすけど、詰めが甘いっすよね。


「さて…アイテム出現率修正:OK。出現率の修正:OK。魔物のパラメータ修正:OK…よし、あとは…そうね。このコードを仕込んでおくっす」


ダンジョン内全てのC言語ソースを復元したあたしは、あたし以外が再び不正アクセスした際に発動する罠コードを一文入れておいて、試験走行テストランを実行し、無事復旧および改良した事を確認した。



これで、あとは誰がやったか分かるよね?

あたしはそう思いながら、アンジェさんに各ギルドに修正報告する様に依頼し、令嬢ギルドへと戻った…








数日後…



「クラリスちゃーん、各ギルドからお礼の言葉か来てるわよー」

「いつもの事っすよ」


あたしはマスターにそう答えながら、先日のエミーさんと一緒に魔物狩りに行った時に使った巨人素材のボウガンを磨いていた。


火砲式も悪くはないっすけど、音を立てずに射る場合はこちらの矢じり式の方が便利なんすよね。

まぁ、それはさておき…


「マスター。何か動きは無かったっすか?」

「動きって、何?」

「初心者ダンジョン周りでの出来事っす。一応、仕掛けては置いたんすが…」

「そう…ねぇ。今の所はないねぇ…たむろっていた荒くれ冒険者達が街の清掃に励んでいるぐらいは聞くけど、それ以外はないわねぇ…どうして?」

「いえ、なんでもないっす」


未だに動きはなし…感づかれたっすかね?

と、そう思いながら、レッドタイガーのエビフライを食べようとした時だった。


「ヘェイ!マスター!!チョーっと来てくだサーイ!!」

「あらあら、どうしたの?ブリンダちゃん」

「初心者ダンジョンで電磁波の檻に閉じ込められた学生の女の子がいるのデース!!ワータシの力では無理なのデース!!」


これは予想外っす。

大抵、ダンジョンクリエイター系チート持ちは10代の男子生徒が大半なんすけど、まさか犯人が女の子だったとはね…

合っておくべきか…


「ブリンダさーん、その電磁波の檻はあたしが仕掛けた罠っす。たぶん、その子がダンジョンをデータを不正に弄っていたと思うっすから、一度会いに行くっす」

「ホワッツ?アレ、クラリスが仕掛けたのデースか?」

「あらら、クラリスちゃんの言う動きって、コレの事だったのね」

「そう言うことっす。ちょっと、年長者の説教も兼ねて言ってくるっす」


そう言うわけで、あたしはエビフライを食べ終えた後に、一人でダンジョン入口まで向かっていった。

といっても、マスターとブリンダさん含め、ギルドにいた皆もあとから着いてきたっすがね…



「出せよ!出してよ!!私はあいつ等に復讐するために、ここで強くなるんだよ!!」

「何言っているんだ?こいつは?」


案の定、電磁波檻のトラップの中で暴言吐きながら暴れる女の子の周りに、冒険者やギルド関係者による野次馬が出来ていたっす。

なので、さっさと手短に済ませる事にしたっす。


「はいはーい。退いて貰って良いっすかねー?」

「く、クラリスさんじゃないですかぁ…どうぞどうぞ」


荒くれ冒険者達はあたしに察したのか一斉にモーゼの海の如くに道を作ってくれたので、あたしはスムーズに近づく事が出来たっす。


さて…


「あんたっすね。街中の初心者ダンジョンを弄っていた奴は?」

「な、何よあんた!?何様なわ…」


予め、クリエイターチートを発動していたあたしは、入口とはいえダンジョンの設定を弄くって、喚こうとしていた女の子にダンジョン罠でかなり強力なアローレインの銃口を突きつけた。


「質問を質問で返すのは簡便っす。蜂の巣になりたくないなら、答えるっす。ダンジョンを弄ったのはあんたっすね?」

「そ、そうだよ…私が弄ったよ!!」

「ふーん…んで、何のために弄ったんすか?クラスメイトに復讐する為?それとも…」

「な、なんで私がクラスメイトのあいつ等を復讐すると分かったの…?」

「学生服、さっきの喚いていたあいつ等に復讐、そして稚拙な若さ…の要点を考察してからの答えっす。これでも、似たような子を何度も相手をした事があるっすからね」

「だ、ダンジョンマスター同業者なわけ…?」

「そうっすね。でも、あたしはこれでも冒険者っすからね。いわばダンジョン持たないフリーのダンジョンクリエイターチート持ちの自由人なんす。あと、あたしのチートは五歳の時から持ったっすから、経歴は13年以上なんすよね」

「ふ、ふざけてるわ…あの女神嘘をついたわね…!!私の復讐の為に私”だけ”のダンジョンマスターのチートを授けるとか言っておいて」


あちゃあ…あの女神クズの被害者、ここにもっすか…

本当に懲りないっすね…


「あー…もしかしてっすけど、あんた。中学校か高校で虐められてる最中に教室のクラスメイト全員と担任ごと転送され、あんた以外の全員がチートを貰って勇者になり、役立たずな能力の為に生贄にされたパターンっすか?」

「えっ…?えっ…?な、なんで分かったの…貴方、エスパー?」

「いや、この異世界のテンプレート復讐者の一例っす。ちなみに、これであたしの所属しているギルドでは3件目っす。前2件は別のダンジョンで発覚したっすけど」

「う、嘘…そんな…あの女神…嘘つきぃぃぃぃぃぃ!!」


あー、ご愁傷様っす…

あと、この子のクラスメイトらしい勇者の集団に気をつける様に、マスターにギルド会議で各国に連絡しておいた方がいいっすね。

自惚れ系チート学生勇者集団は、異世界の癌となりえるっすからね。


さて、同情はするっすが…やはり他人のダンジョンを不正アクセスしたイレギュレーション違反っすからね。

お仕置きはしないといけないっすね。

というわけで、あたしはアローレインと電磁波のトラップを消去してから、彼女の両手に手枷を填めておいたっす。


「なんにせよ。街中の国営ダンジョンを不正改造した罰は受けて貰うっす。というわけで、彼女の身柄があたしの令嬢ギルドで預かるっすけど、いいっすね?他のギルドマスター様」

「ふむ。噂のクラリス嬢なら、身柄を引き受け承認しよう。宜しいですね?令嬢ギルドマスター殿」

「ええ、良いわよ。うちに人員が増えても構わないですし」


マスターの言葉を聞いた彼女は、「えっ?」という顔をしながらマスターとあたしを交互に見ていたっす。


「当分、あんたはうちのギルドで新人冒険者研修というただ働きして貰うっすよ。勿論、その前に罰を受けて貰うっすがね」

「ちょ、ちょっと…私には復讐が…」

「ああ、さっき言っていたクラスメイトと担任っすね。例の件は他の冒険者ギルドに通達してから、裁きを受けて貰うことにするっす。クリエイターチートであんたのデータを調べさせて貰った所、かなりの犯罪紛いの事をしてるみたいっすからね。特に、魔族虐殺の件で…っす」

「う…わ、分かりました…大人しく罰を受けます…」

「おっし、んじゃ、早速…マスター、この子引き取ってギルドに戻るっすね」


そういって、あたしは学生復讐者の彼女を肩に担いで、ギルドの自室へと戻っていった…






数日後。

例の令嬢ギルドで新人の冒険者が誕生し、クリエイターチート持ちの先輩冒険者とコンビを組み、ダンジョン探索で大いに貢献しているという噂が立っていた。

しかし、その新人は何故かメイド服を着ており、「お嬢様、わたくしにお仕置きしてくださいませ…♪」と言いながら頬を赤らめ、休憩中はその先輩冒険者の椅子になっていたとかないとか…

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2024年12月20日 07:00
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2024年12月22日 07:00

昔、令嬢でありましたが、何か? 名無シング @nanasing

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