第13話 救いの手があってもいいよね…Ⅲ
前回のあらすじ
突然。世界を救うメシアとなってしまった私が手にしたのは、勇気の心と魔法の力。本当の友情は互いを憎まない、互いを信じる事…世界はババ抜きと変わらない。誰かがジョーカーを押し付けられる。2話で押し付けられたのは彩音だが、私というもう一人のジョーカーが加わる事によって、バッドエンドは免れた。
世界のメシアとなるため、自分の居場所を探す為の私の冒険の火蓋が切られた。
…いや、締まらないね。ちょっと変えてみますか
前回のあらすじだよ!!
突然世界を救う救世主…所謂メシアになってしまった私が手にしたのは、仲間を思う心と正義の心
誰も死なない世界。誰も悲しまない世界を創造するだけでは変えられない。大事なのは思想では無く、願いを叶える為の行動。動かないと何もならない。ただ悪戯に時間が過ぎ去るだけ。
それでは始まります。刮目せよ!
何故かこの小説の作者は、何か行き詰まる毎に未来編やエクストラ編を描きたがる。
そんなにシリアスが苦手ならSFなんて描かなければいいのに…ていうか、未来編もエクストラ編もSFじゃね…?
小説を書くのが趣味だって言ってる癖に投稿するのはいつもバラバラの時間帯だし…霊子の出番ほぼ無いし…
私はこの小説の作者である。紫時雨に物申すかの様に言葉を発してみた。
「ねぇ、時雨さんよ。どうしてこの小説の主人公は呪縛霊子なのに、出番ほぼ無いの?もしかして…扱いに困って無い?幸福を奪うのか、それとも幸福の二倍の不幸を与えるっていうのが小説という媒体を通して表現するのに苦戦してる?」
作者こと、紫時雨こと、神様は動揺した様子で慌てた。そう、この小説という世界を創造したのは紫時雨なのだ。こいつがいなければ私達は存在出来ない。未来を創造するのもこいつだ。例えば、9話にて、死んだ一誠を最終回で復活させることも可能だ。私という存在を作った全ての親なのだ。
「ひええ!!葵ってば痛い所を突いたなぁ!!そうだよ!?霊子の扱いに困ってるよ!何か悪いかよ?!……ていうか、次そんな事言ったら。次の回で心臓癌を患って死んだ事にするよ?」
参った参った。流石だ。しかし…こんな調子で霞の世界を救うシナリオを書けるのだろうか?案外霞を救う事は簡単に思えるだろう、何故なら死ぬ運命だった一誠を救えばいいだろう。だが、幸福屋。呪縛霊子という死神からは逃れられない。彼女が姿を現した人間は死ぬ。例え、一誠を救ったとしても、霞が死んでしまうかもしれない。だからといって一話以降の霊子を追い払う事は出来ない。一話以降は彼女に悪意は無いのだ。
神様こと、紫時雨は私と居るのが辛くなったのか無言で私を無理矢理暁たちの世界にジャンプさせた。全く、龍神使いの粗い神様だぜ。
……って、ヤバい…もう暁と幸福屋が接触してるじゃん。全力で妨害しなければ…
私は目の前にいる暁を抱き抱える形で誘拐した。
咄嗟の事に暁は声にならない叫びを出していたが
関係無い。ちなみに私は小さい子どもを誘拐する趣味は無い。過去に小さい子どもを誘拐した女がいたが…ご存じの通り、殺されました。今は亡きネクロマンサーの手によってね。
取り敢えず適当な所に着いた私は暁を解放したが…逃がすとは言って無いぞ?
「貴女は誰何ですか?!いきなり私を誘拐して…何が望みなの?!」
望みか…お前を救う事なんだが、それを言えば私は即座に逮捕されるだろう。
どうすれば…暁を救えるだろうか?
結論から言えば暁は霊子によって殺された訳では無い。暁は自殺だ。
幸福の代償を恐れ、自分の手によって自分の小さな命を消滅させたのだ。勘違いしてる人が殆どだと思うが…
呪縛霊子は誰も殺してなどいない
私は取り敢えず、暁を洗脳する事にした。取り敢えず洗脳すれば何でもいけるだろう。早速私は暗示を掛ける事にした。
「私の目を見ろ。お前はトイレットペーパーにも劣る存在だ。トイレットペーパーは使用済みとなれば潔く流れて行くのにも関わらず、お前はしつこく私に問い合わせてくる。いい加減、トイレットペーパーを見習ったらどうだ?」
暁の目は焦点を定めていなかった。まるで自我を失った猫のようだな。
私は洗脳が完了した暁の脳に映像を流し込んだ。
あれ…?何これ…?
突然、私は変な女に誘拐されたのだ。突然の事で私は反応出来なかった。少しでも意識があれば私は防犯ブザーを鳴らしてやる事が出来たのだが…
この暁…一生の不覚だ…父上に顔向け出来ないぞ
何だ?この映像は…?
睦月ちゃんと水無月ちゃん…どうしたんだろう?
脳の中の睦月ちゃんが叫ぶ。本能の叫びのようだな。
「どうして…幸福屋と契約したのさ!?死んじゃうのかもしれないんだよ!?」
涙を流しながら、普段あまり喋る事の無い水無月ちゃんが珍しく怒った。
「暁ちゃんはいいかもしれない…だけど!取り残された私達はどうすればいいの!?あの時もっと念押ししとけば…って一生心に傷を負わせて生きていけって言うの!?死んだ人間は二度と甦らないんだよ!?」
これは…私が幸福屋と契約した未来の話か?確かに。私は死んでしまうが…私は自分が生きていていいと思えないんだ。私はずっと誰かに否定されながら生きていくなんて御免だね!!それだったら死んでやるさ!
バチンッ
突然、睦月ちゃんが私の頬を叩いた。そんなにも私はおかしい事を言ったのだろうか?
私は家族にも、友達にも誰からも必要とされていなかった人間だぞ?何故…?
「馬鹿っ!!頼り無いから?誰かに否定されながら生きていくのが嫌だから?そんなのあんたの勝手じゃない!!わからないの!?貴女は信用されているし、必要とされているのよ!じゃなかったら私達はあんたに怒ってないよ。確かに、私達以外の知らない人間だったらあんたの事なんかどうでもいいかもしれない。だから、私達が怒ってあげる。じゃないとあんたは誰にも怒られなかったと思うから。馬鹿な契約はさっさと破棄してきなさい」
私は気付いた。てっきり私は誰からも必要とされていないと思っていた。それは間違いだったのだ。誘拐されてやっと気付いた。私は生きていていいんだ。私は必要とされている人間だ。
簡単な事だったんだ。誰かに相談すればいい。
一つの究極的な方法しか思い浮かばないなら、それは限界の合図なんだ。誰かに相談するだけでも心のつっかえは砕ける。私は生きていていいんだ
私は目を覚ましたが…気付けば家のベッドの上だ。きっといい夢を見ただけだろう。誘拐されて洗脳されたと思ったら、私にとって、人生で一番大事な事を教えてくれた。私は絶対にこの記憶を忘れない
10年後
結婚して、私は西園寺では無くなった。代わりに私が授かった新しい名字は柴垣になった。
「おい、暁ちゃん。今日は古本屋デートしようぜ」
この人は珀斗さん。私よりも2歳年上だけど私とは同い年の幼なじみの様に優しくしてくれるいい人だ。
ちなみに言っておくが、私はあかつきでは無く。
あきらなのだ。
嫁の私から見ても珀斗の趣味は理解出来ないが…
私は珀斗の考え方、性格の良さに惚れてしまったのだろう。
私は珀斗に出逢ってからも自分を否定し続けた。私なんて誰からも必要とされていないって。きっと私は『確かにな』と言われると思っていたが…
『お前が自分を否定するのなら、僕はお前を肯定してやる』私はこの一言だけですっかり惚れ込んでしまった。
私と珀斗さんが結婚するのは1年も掛からなかったちなみにプロポーズは私からした。所謂逆プロポーズというやつだ。珀斗さんは喜んで泣いていたな…一生分の運を使いきってしまったのだろうか?こんな思いをするなら、私は貴方とは出逢わなければ良かった…
今日も行きつけのお店に向かう。古本屋の棚まるまる購入した珀斗は満足そうに言った。
「いや~こんなに買ってしまったぜ。もうこれで思い残す事はないね」
私の胸がチクりと薔薇のトゲが刺さったかの様に痛んだ。例え冗談でも、死んでもいいなんて言わないで欲しい。神様は意地悪だから、いつ人に与えた幸福を2倍の不幸にして返済させるなんてわからないんだ。もしかして今日死ぬかもしれない…
人生はチェスと同じだ。一手一手真剣にしないとすぐに人生のチェックメイトを迎え、心を砕かれる。或は死で償う事になるかもしれない。
皮肉ながらも、私の予感は的中してしまった。
車で帰る途中に私達は事故に遭ってしまった。
大型トラックと正面衝突したのだ。勿論私達は即死…になるはずだった。死んだのは珀斗さんだけだったのだ。しぶとく生き残った私は一生頭から下の身体を動けなくなってしまった。あんなにも優しくしてくれたお義母様やお義父様は私の事を人殺し扱いします。あの時にお前がもっとしっかりしていればあいつは死ななかったと。
私は憎まれながら介護を受けて生きていくしかありませんでした。私はまだ20代だと言うのに…
あまりにも酷すぎる。一生動けず、将来を誓った伴侶にも先立たれ、憎まれながらも必死に介護を受けて生きていくなんて…
やはり私は誰からも必要とされていないんだ。
死ぬことさえ出来ない…地獄だ。地獄の様な呪縛が私を掴んで離さない。
「諦めるのはまだ早いよ」
聞いた事のある声がした。誘拐されて以来。全く顔を合わせていなかった女の人。名前さえ聞けなかった謎の人物。こんな絶望的な私に何を助言してくれるの?人生時には助言だけじゃ救えない魂もあるんだよ…?どんなにも感動する言葉を言われても、壊れた身体は元に戻らないんだ。それと大切な人を失った悲しみは二度と忘れられない。
「誘拐犯さん…今度はどんな感動する言葉を教えてくれるわけ?失った悲しみを忘れさせてくれる魔法の呪文?それとも使い物にならなくなった身体を治してくれる呪文かなぁ!!」
私は最低だ。いくらなんでも、人に八つ当たりするなんて…これじゃ、天国に居る珀斗さんに顔向け出来ないや…
「あるよ。身体を動かす事は出来ないけれど…人を失った悲しみは消せるよ?」
私は半信半疑で一か八か聞いてみた。
「何なのさ。まさか私に死…」
「君が愛した人間に関する記憶を全て消す」
私が言い終わる前に女は言った。珀斗さんの事を忘れるだと…?ふざけるな!あの人は初めて私を肯定してくれた男性だ。返事はわざわざ考えるまでも無かった。
「忘れてたまるか…絶対に忘れてやるもんかっ!
天国から見守ってくれてる珀斗さんが心から安心してくれるまで私は必死にこの運命から抗って魅せる!あの人に教えて貰ったんだ。
『奇跡は起きる物じゃない。自らの手で引き起こすんだ』ってね!!」
女は拍手した。まるで私を尊敬しているかの様に
「言えたじゃないか、君は心ではそう思っていても、心の奥では生きたいって思ってたんだね。だったら奇跡って物を魅せて貰おうか、君が歩ける…いや、走れるまで。私は君が運命から抗う所を見るとするよ。大丈夫。介護は私がするよ。両親には話を着けておく。姉とでも言えばいいかな?」
駄目だな私…もう二度とこの人に助けられないって決めたのに、10年で終わっちゃったよ…
そういえばこの人の名前は何だろうか?
「ねぇ貴女の名前はなんて言うの?それと貴女は何者?」
女は堂々とドヤ顔で話した。
「私かい?名乗る者でも無いさ。何者かって言われたら…通りすがりのメシア。とでも言えばいいかな?」
メシア?何それ、意味分かんないよ。でも、何故か暖かいな思ったんだ。
心の隙を突くって感じじゃなくて、心の隙間を埋めてくれるって感じがしたんだ。
もし私が幸福屋の言う通りにしていたらどうなっていたんだろう…死んでいたのかな?…止めようこんな意味の無い考えは…そういえば!今日は久しぶりに睦月ちゃんと水無月ちゃんがお見舞いに来てくれるんだった!!私はメシアさんに帰られる前に本当に聞きたかった事を聞いた。
「どうして貴女は私を助けてくれたの?10年前だって貴女は私を助けてくれた。どうして?」
「なんとなくさ。理由は無いよ」
メシアさんは帰ってしまったが、これから私の闘病生活が幕を開けたのだ。灰色の様な人生にオレンジ色の希望が射し込まれた。またあの人のおかげで生きる意味を教えて貰ったよ…面と向かって言えなかったけれど…今言わせて。
「ありがとう…」
病室から出た私はこっそり呟く。
「バーカ。丸聞こえだっての」
でも、よかった。折角死ぬ運命を一度折ったのに、また
奇跡は起きる物じゃない。自分の手で引き起こす物か…
日差し眩しい午後。引くカーテンも無しに私はボソリと呟いた。
「また、歩けるといいな…龍神の私が世話してやるんだから、歩けずに死んだら許さないよ」
駄目だな。やはり私にはこんないいキャラは演じきれない。私には憎まれ役がお似合いなのさ。
神様よ、どうして貴方は何の罪もない彼女達にあんな酷い運命を背負わせるんだ?
救出完了
西園寺(柴垣)
如月睦月…生存
照月水無月…生存
ていうか、Ⅱでは12話で続きが読めるはずなのに作者の勝手で13話になってしまった。申し訳ない
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