第14話 救いの手があってもいいよね…Ⅳ
前回のあらすじだよ!
突如、世界を救うメシアとなってしまった私が手にしたのは、諦めない心と不屈の力。奇跡は起きる物じゃない。自分の手で引き起こす物。生きる意味を完全に失っていた
約束は時には呪縛になりうる…
日差し眩しい午後…というフレーズを気に入っている。この小説の作者は多用しているが、実にありきたりである。カーテンが無いのにカーテンを引かせようとしたり、滅茶苦茶である。もっといいフレーズを私が考えてやろうか。例えば…
『ギラギラ照りつける太陽は私達を溶かそうとせんばかりに煌めく』…どうだろう…よくわからないが、私達は此処で話しているべきでは無いだろう
少なくとも霞の世界を残しているというのに…
確かに、一番の難関の三話を突破した名誉は大きいが、霞編をさっさと描かなかった不名誉の方が大きいだろうか?
ふと思うのだが、宇宙人は本当に存在するのだろうか?UFOなど嘘の存在では無いかとこの小説の神様こと、紫時雨は思っていたのだが、最近、確信させられる出来事があった。それは…よく夏とかで放送されるUFO特集の番組だ。フェイクであんな綺麗な映像を作れる訳が無いだろう?それと、私は信じた方が面白いと思っているので、大統領が居ないと宣言しても私は信じ続ける。奇跡は起きる物じゃないからね。自分の手で引き起こす物なのさ。
実に関係無い話なのだが、ファミコンのゲームでよくあった表現技法である、20XX年という物に私は物申したい。確かにそのゲームが作られたのは90年代なのだが、未来人の私から言わせて貰えば、たった十年ちょっとで空飛ぶ車など造られている訳が無いんだよなぁ。2025年でも車は地に足を着けて走らせているし、未来人は誕生していないし、超能力者も私が知る限りは存在していない。
ちょっと待てよ…このメッセージを過去の人間に見せたら、私は未来人になる訳か…実に奥深いな。
余韻に浸っている私を尻目に、神様こと、紫時雨が言った。
「つまらない話はほどほどにしろ。耳が腐ってしまうわ」
カチーンと来た私は言い返そうとした瞬間。また、私はドラク●で言う、ル●ラで飛ばされた。流石神様だ。都合が悪くなるとすぐに魔法を使いたがる。
日差し眩しい午後…というのはもう飽きたか…
日下部霞と天道一誠の世界に私は飛んだ私は、辺りを散策することにした。幸運にも、今回の件は簡単だろう、幸運屋こと、呪縛霊子が登場するのは、一誠が死んだ後だ。つまり、一誠を死なせなかったらいいのだ。
気付けば、霞は指輪を嵌めている。後5分足らずで一誠が死んでしまう。私は霞の元に全力疾走で向かい、声を掛けた。
「よぉ、幸せそうだな」
霞達は当然の如く。私の事を知らない。知らない女が勝手に話し掛けてきたのと同じだ。これでは完全に不審者扱いだ。世界のメシアとはいえ、こんな扱いをされれば頭にくるがな。
一誠が声を張り上げた。まるで自分の大切な人を守る為に。
「誰だよ…お前は。俺達の何を知ってるんだ?お前は何者なんだ?」
「通りすがりのメシアって所かな…実はね、私は未来が見られるんだ」
霞が目を輝かせて私に尋ねた。
「未来が見えるの!?凄い!私達の未来はどうなってるの?」
私は此処で嘘をつくべきか迷ったが、本当の事を打ち明けるべきにした。一誠に指を指して言った
「ハッキリ言って、お前は後10分未満で死ぬよ」
瞬間に一誠が笑い飛ばした。これでもか、ってぐらいに笑い飛ばした。
「俺が死ぬだって?ありえねぇな。俺は一生霞の隣で生きていくんだ。死なんて概念は俺の辞書には載ってないね」
だったらその辞書は不良品だ。今すぐ新しい辞書を買ってこい。
「じゃあな、未来人サマ。俺達は忙しいんだ」
霞が心配そうにしていたが、結局行ってしまった。これで何か運命が変わるのだろうか?今まで成功してきた分、私は失敗を恐れた。
が、私の心配は杞憂に終わる事になる。
未来が見られるか…私にそんな力があれば、どんなにも良いことだろうか。一誠はもっと私を頼ってくれるに違いない。
一誠は道路の近くでふざけている。確かにあの人は信用出来ないかもしれないけれど、道路で遊ぶのはどうかと思うな…
私は左手の薬指を見る。銀色の、真冬の吹雪が襲う町の大空の様に、指輪が煌めいていた。
車が突然、猛スピードで走ってきた。どうしよう。一誠は気付いていない。
自分が引かれるなんて事に
声を出すよりも速く、私は咄嗟に左手を突き出して一誠を突き飛ばした。一誠の身は守られたが、
私の身体は…左腕ごと左手が砕け散った。
途轍もない痛みが私を襲い、意識を半ば強制的にシャットアウトさせられた。
私が目を覚ました場所は病院の白いベッドだった。日差しは眩しくない、カーテンを引くまでも無いだろう。いや、引けないな…
左腕が無いのだから
よく周りを見渡してみれば、目を真っ赤にした一誠がすやすや眠っていた。きっと一誠の事だから、私の心配と後悔で自分を責めたくなったんだろうな…責任感の強い一誠がしそうな事だ。
私はこの選択を間違ったと思わない。むしろ自分に被害が集中する事で一誠を無傷で済ませたのだ。誇らしく思えるほどだ。
扉が開く。中に入って来たのは、私達の命運を教えてくれた未来人だ。
「ごめんなさい。車を爆破させようとしたけど、間に合わなかったんだ。許してくれ…」
未来人さんは頭を下げた。きっといい人なんだろうな…こんな見ず知らずの人間に頭を下げられる程の覚悟があるなんてね。
「いいんだ。今回は私も一誠も両方の責任だよ。貴女が頭を下げる程でも無い。むしろ私は感謝してるんだよ。貴女が教えてくれなかったら…きっと一誠が死ぬ事になりそうだから…そんなの私は耐えられない」
窓から漏れる木漏れ日と涼しい風が私達を包む。きっと風に色を付けるのなら。朝は水色、昼はオレンジ色、夜は紫色。だと思うんだ。
未来人さんは呆れた様に頭を抱えた。
「君は本当に一誠一色だね。愛の力はこんなにも大きいな奇跡を引き起こす物なのか…」
大きい奇跡?よく分からないけれど、そろそろ一誠は起きてくれてもいいんじゃないかな?
寝てるフリしてるでしょ?バレバレだよ?何年一緒にいると思ってるの?
私の熱い眼差しに参ったのか、一誠は狸寝入りを止めた。
「バレバレか…なんとなく起きたくなかったんだ
もし、霞が霞じゃ無くなってたら…怖くて。俺のせいで…」
私は片方の手で一誠の頭を撫でた。不幸中の幸いとでも言うべきか、利き手を欠損しなかったのは実に大きい。数学のテストの大問1を全問正解した時ぐらい大きい。
「いいんだよ。私は一誠を責めたりしないよ…私は全部許します。だから教えて?どうすれば貴方は泣くのを止めてくれるの?」
一誠はびしょびしょの袖で、焼け石に水かの如く涙を拭った。
「一誠に謝らないといけないことがあるの…ごめんなさい…私ね、左腕が砕けて、指輪も粉々で…指輪壊しちゃった…ごめんなさい…」
脳内がフラッシュバックを起こす。車のせいで自分の腕が砕け散った瞬間を思い出してしまった。
嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。もう、あの痛みなんて…
「霞!!」
一誠が私の肩を掴む。安心した私はやっと一誠の話を聞ける状態になった。
「よく聞け、俺は指輪を失くそうが壊そうが関係無い。俺を守る為に犠牲にしたのなら尚更だ。また新しいの買ってやるよ。同じやつな」
私は病室を出た。あんな甘ったるい空間にいたら、チョコレートになってしまうよ。結果的に今回も成功か。時雨、茜、暁、霞の全員を救ったのだ。表彰の一つでも貰わないとやってられないよ。
人影が出てきた。見覚えのある顔を見せる。
黒いショートヘアに、キレイな紅の色をした瞳。
呪縛霊子だ。今回はあまり出番が無かったのがそんなにも恨めしいことか?たまには大人しくしてろ。
救出完了
日下部霞…生存
天道一誠…生存
救いの手シリーズ完結
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