第6話「深まる謎」
「ちょっと、これ見て!」
深夜の解析室で、白石凛が画面を食い入るように見つめていた。そこには過去一ヶ月のヴォイド出現データが展開されている。
「どうかしたの?」
夜間警備を終えた陽斗が顔を覗き込む。
「ほら、この出現パターン。まるで……」
「まるで?」
「人為的よ」
凛の言葉に、陽斗は息を呑んだ。
「これ、研究所の機密データなんだけど」凛は声を潜める。「ヴォイドの出現、全部が実験区域の端から500メートルの範囲内なの」
「それって……」
会話は突然の物音で中断された。グレイ副所長が、予定外の深夜視察に現れたのだ。
「お二人とも、こんな時間まで熱心ですね」
にこやかな表情の下に、ある種の緊張が潜んでいる。
「は、はい!研究の参考に」
凛は慌ててデータ画面を切り替えた。
グレイ副所長が去った後、二人は顔を見合わせる。
「データ、全部消されてた」
凛が囁く。
「でも、これだけは」
陽斗はメモを取り出した。そこには一つの座標が記されている。
翌日、実戦訓練でレイと対峙した陽斗は、ある違和感に気付く。
「この位置、まさか……」
ヴォイドの出現位置が、凛の予測した座標と完全に一致していた。
通信越しに、レイの鋭い声が響く。
「気を付けろ。おまえだけじゃない、何か、俺たち全員が見えない糸で操られているような気がする」
その言葉に、陽斗は父の残した最後のメッセージを思い出していた。
『量子共鳴には、まだ誰も知らない可能性が眠っている』
陽斗は固く決意する。
「必ず、真実を——」
その時、警報が鳴り響いた。
今度は、想定外の場所でヴォイドが出現する。
「これは、罠!?」
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