第2話
「今、あなたはどんな状況でこの音声を聴いているのでしょうか?」
その声が、亮の意識に滑り込んでくる。
一瞬の沈黙。その間に、自分を取り巻くもどかしい状況が頭を巡る。
「何か辛い状況にあったり、大きな問題に直面していたり、これからの人生に思い悩んでいたりするのかもしれません。だからこそ、『人生を変える秘密』という言葉に反応したのでしょう。」
声は優しく、しかし確かな力強さを持って続く。
「でも、今何か問題を抱えているとしても、これからどうしたら良いのかわからなかったとしても、それはあなたに問題があるからではありません。
今のこの世の中で、何も問題を抱えずに、思い通りに理想の人生を歩めている人なんて、ほとんどいないかもしれません。でも、それはなぜだと思いますか?
それは、今の世界に生きるほとんどの人が、仕事、お金、人間関係、身体や心の状態、周りの状況など、すべて表面的に起きる問題に意識がいき、目の前に現れる一つ一つの問題をなんとかしようとして、右往左往しているからなんです」
「でも実は、その一つ一つの問題の深層に、すべてを生み出している根源的なものがあるのです。
その根源的なものに気づき、それをコントロールする方法を身につければ、あなたの人生は劇的に変わります。いや、単に変わるというより、人生そのものの意味が変わり、生きる次元がまるで違うものになる、と言っても良いかもしれません。
その根源的な『秘密』について、これからあなたにお伝えしていきたいと思います。」
本当にそんな秘密があるのか?
疑念と共にそれを上回る期待が突き抜ける。
「まず初めに、その根源的な『秘密』を一言で表すとするなら、それは『波動』です。」
波動?なんか怪しげな話か…
落胆と疑念が頭をよぎるのを、その声は予期していたかのように続く。
「『波動』なんて胡散臭い、そう思われたかもしれません。
でも、今、あなたの内側の感覚に意識を向けてみてください。
この私の話を聴き始めてから、何となく心地良さを感じて、聴き続けているのではないでしょうか?」
そう言われれば、確かにそうかもしれない…。
「それは、私の声、話す内容、言葉の一つ一つ、その言葉と言葉の間、バックに流れる音楽、そういったものすべてが波動を持ち、その波動に、あなたが心地良さを感じているからなんです。」
声は、さらに深みを増す。
「この世界に存在するものは、すべて固有の波動を持っています。そして、私たちがそれぞれのものを固有のモノとして認識できているのは、その波動の状態を感じ取っているからなのです。」
一瞬の混乱。
「どういうこと?そんな疑問が湧いてくるのも自然なことです。しかし、心配いりません。これから、身近な例を交えながら、ゆっくりと説明していきます。
例えば、「水」について考えてみましょう。私たちが普段「水」と呼んでいるものは、液体という波動の状態で認識しています。しかし、その波動が変わって固体という状態になると、私たちはそれを「氷」と呼びます。さらに、気体という状態になると「水蒸気」となり、時には目に見えなくなることすらあります。
しかし、その本質は変わっていないのです。ただ、波動の状態が変化しただけなのです。
光についても同じことが言えます。私たちは通常、光を白っぽいものとして認識しています。しかし、その波長、つまり波動の長さによって、様々な色に見えたり、時には目に見えない紫外線や赤外線となったりするのです。
つまり、同じものでも「波動」の状態が変われば、私たちはまったく違うものとして認識することになります。そして実際に、モノとしての状態も変化するのです。
これは何を意味するのでしょうか。そう、この世界を変えるためには、世界の波動を望む状態に変えればいいのです。」
それはそうかもしれないが…
「そんなことできるの?そう思うのも無理はありません。確かに、一度にすべてを変えることはできません。しかし、少しずつ変えていくことは、誰にでもできるのです。
そして、誰にでも一番変えやすい波動があります。それは何だと思いますか?
私の答えを聞く前に、ぜひ考えてみてください。」
次の更新予定
時を超える旅 @iwayama7
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