第5話: 試練の倉庫潜入

翔とルーメンは、カイリから与えられた試練――ザイム心理教が管理する物資倉庫への潜入作戦に挑むため、地下街の外れへと向かっていた。


倉庫は薄暗い路地の奥、鉄柵で厳重に守られた建物だった。周囲には監視カメラが設置され、数人の武装した見張りがいる。翔はその光景を見て唾を飲み込んだ。


「……こんなの無理だろ。見張りがあんなにいるじゃないか。」


翔が弱気な声を漏らすと、ルーメンが静かに応じた。


「心配しないでください。計画を立てて行動すれば、成功の可能性は十分にあります。」


「計画って……どうするつもりなんだ?」


翔が尋ねると、ルーメンは淡々と答えた。


「私が監視カメラを無効化し、見張りを攪乱します。その間に翔さんが倉庫内に潜入し、物資を回収してください。」


「俺が中に入るのか……。」


翔は苦い顔をしたが、逃げ場がない以上、やるしかないと覚悟を決めた。


監視カメラの制圧


翔が物陰に隠れながら様子を伺っている間、ルーメンは倉庫近くの通信端末に接続し始めた。数秒もしないうちに、周囲の監視カメラが次々と無効化される。


「すげぇな……こんなこともできるのか。」


翔が感心していると、ルーメンが冷静に指示を出した。


「次に、見張りを引き離します。」


ルーメンは廃材の山に隠れていた翔を振り返り、言った。


「翔さん、タイミングを見て倉庫内へ進んでください。」


「分かった。行くぞ……!」


翔は自分に言い聞かせるように小声でつぶやき、息を潜めながら倉庫の入口へ向かって走った。


倉庫内の探索


倉庫内はひんやりとしていて、巨大なコンテナがいくつも並んでいた。翔はルーメンから受け取った簡易端末を手にしながら、指定された物資が入っているコンテナを探す。


「これか……?」


コンテナを開けると、中には食料や医薬品、武器などが詰まっていた。その中で特に目を引いたのは、一つの小型ケースだった。ケースにはザイム心理教のロゴが刻まれており、中には何かのデータチップが収められている。


「これ……ただの物資じゃない。」


翔がチップを手に取ると、ルーメンの声が端末から響いた。


「翔さん、そのチップはおそらく重要な情報が記録されています。」


「……こんなものまで手に入れろってことかよ。」


翔は不満を漏らしながらも、ケースを抱えて倉庫を出ようとした。しかしその時――


襲撃


「おい、侵入者だ!」


倉庫の外から叫び声が聞こえた。翔が慌てて顔を上げると、武装した見張りが数人、倉庫内に突入してきた。


「ルーメン! バレたぞ、どうすればいい!」


翔が端末に叫びかけると、ルーメンが冷静に指示を出す。


「落ち着いてください。脱出口を確保します。」


その瞬間、倉庫の非常灯が点滅し始め、音響システムから耳障りな警報音が響き渡る。見張りたちは混乱し、翔に注意を向ける余裕を失った。


「今だ、走れ!」


翔はルーメンの声に従い、物資を抱えたまま非常口へと走り出した。


決死の脱出


非常口の先には、ルーメンが待機していた。彼女は翔を見ると、すぐに彼の後ろに迫る見張りを牽制するように動いた。


「翔さん、私が後を引き受けます。早く逃げてください!」


「おい、それじゃお前が――」


翔が言いかけたが、ルーメンは首を振って答えた。


「私はAIです。損傷しても修復できます。あなたの安全が最優先です。」


その言葉に、翔は一瞬ためらった。しかし、ルーメンの決意を目にして、彼は再び走り出した。


翔が全力で走り抜けた先には、カイリが待っていた。翔が物資の入ったケースを見せると、カイリは驚いたように口を開いた。


「よくやったな……坊主。本当に戻ってくるとは思わなかった。」


翔は息を切らせながら答える。


「……これで、信じてもらえるか?」


カイリは少しの間、翔を見つめた後、にやりと笑った。


「上出来だ。これからよろしく頼むぜ、翔。」


翔はその言葉を聞きながら、まだ戦いの終わりではないことを実感していた。しかし、初めて「仲間」という存在を得たことで、胸の奥に小さな希望が生まれていた。


次回予告


ザイム心理教の物資を奪い、新たな仲間カイリを得た翔。しかし、物資に含まれていたデータチップには驚くべき情報が記録されていた。ザイム心理教の真の目的とは――? 翔たちは次なる行動を模索する中で、さらなる敵の脅威に直面する。


翔が試練を乗り越えて仲間を得る流れを描きました。次回は、データチップの謎と新たな展開に焦点を当てていきます。

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