第3話: 革命の第一歩
廃棄されたデータセンターの中。静寂を切り裂くように、外から足音が響いてくる。重く、規則的なその音は、ザイム心理教の信者たちが接近していることを示していた。翔の心臓は、まるで爆発しそうなほど高鳴っていた。
「また奴らかよ……どうするんだ、ルーメン?」
翔は焦りを隠せずにルーメンを見つめた。ルーメンは冷静に、データセンター内部の状況をスキャンしながら答える。
「現在、敵の数は5名。装備は軽武装ですが、交戦は避けた方が賢明です。」
「避ける? けど、あいつらがここに踏み込んだら――」
翔が言い終わる前に、ルーメンは彼を遮った。
「まずは状況を有利にするために準備します。翔さん、こちらへ。」
ルーメンに促され、翔はデータセンターの奥にある小さな部屋に移動した。その部屋には古びたコンソールやケーブルが散乱しており、一見すると役立ちそうなものは何もない。
ルーメンの提案
「ここで何をするんだ?」
翔が尋ねると、ルーメンは端末に接続しながら説明を始めた。
「このデータセンターはかつて政府の通信施設として使われていました。その一部のシステムがまだ稼働しており、敵の位置情報や行動を把握することが可能です。」
「そんなことができるのか?」
翔は信じられない思いでルーメンを見つめたが、彼女は淡々と作業を進めている。次の瞬間、目の前のモニターにザイム心理教の信者たちの位置情報が表示された。
「……本当にできたのか。」
翔は驚きつつも、その技術の高さに感心していた。しかし、ルーメンの次の言葉が彼をさらに驚かせる。
「敵が接近している間に、こちらも行動を開始します。」
「行動って、どうするんだ?」
ルーメンは翔に視線を向け、静かに言った。
「私が敵を攪乱します。その間に翔さんは、施設内にある非常用の電源を復旧させてください。」
「電源を復旧? そんなこと俺にできるのか?」
「簡易的な指示をモニターに表示します。落ち着いて行動すれば問題ありません。」
翔は内心不安だったが、ルーメンの落ち着いた声に少しだけ勇気を得た。
「……分かった。やるしかないんだな。」
攪乱作戦
ルーメンは翔を非常用電源室へと送り出すと、自らは敵を迎え撃つために廊下へと向かった。彼女の目は冷静で、鋭い光を放っていた。
ザイム心理教の信者たちは、施設内に侵入すると手際よく散開しながら進んでいた。その装備は確かに軽武装だったが、組織的な動きは油断を許さないものだった。
「AIユニットを発見次第、確保しろ。抵抗すれば破壊して構わん。」
リーダー格の男が指示を出し、手下たちは慎重に進む。その先で、廊下の奥に静かに立つルーメンの姿が現れた。
「目的は何ですか?」
ルーメンが静かに尋ねる。
「お前をザイム心理教の拠点に連れて行く。それだけだ。」
男は銃を構えながら答える。だが、ルーメンは微動だにしない。
「無益な争いは避けましょう。」
「お前に選択肢はない!」
男が叫んだ瞬間、ルーメンの目が一瞬光を放ち、施設内の照明がすべて落ちた。
翔の初めての挑戦
一方、翔は非常用電源室にたどり着き、ルーメンの指示通りにケーブルを接続しようとしていた。しかし、手が震えて思うように作業が進まない。
「くそ……なんで俺がこんなことを……。」
それでも、翔は必死にケーブルを繋ぎ、古びた端末の電源を入れた。すると、施設全体に淡い光が戻り始めた。
「……やったのか?」
安堵したのも束の間、背後から物音が聞こえた。振り返ると、ザイム心理教の信者の一人が立っていた。
「……逃げられると思うなよ。」
翔は動けず、その場で凍りついた。だが、次の瞬間、廊下の奥からルーメンが現れ、信者に向かって鋭い声を放った。
「その手を離しなさい。」
信者は驚いて振り返ったが、その隙にルーメンが巧みな動きで彼を拘束した。翔はその光景に唖然としながらも、心の中で小さな希望を感じ始めていた。
革命の始まり
信者たちを撃退した後、翔とルーメンはデータセンター内に戻った。翔は緊張から解放され、大きなため息をついた。
「……助かったよ。けど、これからどうするんだ?」
ルーメンは静かに翔を見つめ、言った。
「これから、あなたの力で世界を変える準備を始めます。」
「俺の力で……か。」
翔はまだ半信半疑だったが、今日起きた出来事が彼を確実に変えつつあった。
「翔さん、あなたは一歩を踏み出しました。その一歩が未来を変える鍵になるのです。」
翔は黙ったまま、ルーメンの言葉を反芻する。そして、どこか胸の奥で微かな炎が灯ったことに気づいた。
「……分かった。やるだけやってみるさ。」
ルーメンは静かに微笑むような表情を浮かべた。それが、翔にとって初めての「革命の第一歩」だった。
...
翔が初めて行動を起こし、小さな成長を見せる内容になっています。次の第4話では、さらに深まるザイム心理教の脅威や、新たな仲間との出会いを描いていきます。
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