第12話

映画を見た後、少し歩いてからカフェに入った。


2人で感想を言い合ったり、今まで見た映画の中では何が好きだったかとか、昨日食べたものは何だったかとか、何の脈絡もなく、とりとめのない話をしていたら、時間はあっという間に過ぎていった。



「もう6時過ぎてる。菜々子ちゃんは夜、何食べたい?」


「ごめんなさい、帰らないといけない」


「そうなの?」


「8時が門限だから」


「厳しいんだ」


「かな……」



高3になって、受験生だからという理由で、これまで21時だった門限が20時になった。

それでも、遊びに行くことまでは止められてないのだから、厳しいんだかそうじゃないのかわからない。



「そっか……」



小島さんは下を向いてしまった。


夏に向けてどんどん日が長くなっているから、雨さえ降らなければ6月の6時過ぎという時間はまだ明るい。

そんな時間に「帰る」と言われて、社会人の人にしてみたら、面白くないのは当然のこと。



「だったら、今度から早い時間に待ち合わせをしよう?」


「今度?」


「菜々子ちゃんさえ嫌じゃなければ」


「嫌だなんてそんなことない」


「6月6日って覚えやすいよね? これで6時だったら6が3つ並ぶからもっと忘れない」


「何の話?」


「2人が出会った運命の日」


「小島さん、何にでも運命感じすぎだと思う」


「そう?」


「そんなんじゃあ運命だらけになって一番大切な日を忘れちゃうよ?」


「忘れないよ。絶対に忘れない」



次があるんだ。

そう思うと嬉しくなっていた。

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