第9話

降りる駅が近づいて、ずっと手に持っていたスマホをカバンに入れた時、スマホが振動した。

気のせいじゃない。

カバンからスマホを出す間にも次々とメッセージを受信している。


スマホの画面に表示されているのは小島さんのアイコン。


またスタンプ?


アプリを開くと、「見て!」というスタンプと、「どれがいい? 選んでみた」というメッセージの下に、映画のタイトルと簡単なあらすじの書かれた画像が5つほど表示された。

その画像は、どこかからコピーしてきたものではなく、自分で作ったもののようだった。


これを作ってたから返信がなかったの?


5つの画像を順番に見ると、聞いたことがあるものと、知らないものがあった。そして、1つだけ「おすすめ!」と書かれて、丸印がついていた。



<おすすめのがいいです>

<土曜日13時にTOYOシネマズAの前でどうですか?>



また返信が早い。



<大丈夫です>

<来てくれるまでずっと待ってます>

<ずっとってどのくらい?>



間があった。

考えてる?



<ずっとは言い過ぎました 仕事は休めないので 次の日の朝8時位までしか無理です>



次の日の朝8時まで?

冗談で言ってるのはわかったけれど、ちょっと意地悪したくなった。



<7時半までには着くようにしますね>

<30分でも会えるならいいよ>



またうさぎのスタンプ。

今度は「嬉しい」と書かれている。



<嘘ですよ>

<からかわないで 泣くよ?>



「泣くよ」なんて、そんな脅し聞いたことないよ?


こういうの、きっと慣れてるんだ。

それでも、スマホを見ながら笑ってる自分がいた。


メッセージのやり取りは家に着くまで続いた。





いつだって引き返せた。


でも選んだのは自分自身。


高校生のわたしは、あまりにもいろんなことに無知で、愚かで――




だから消えない罪を負うことになった。

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