第4話
「
「最近始めたバイトがきつくてな」
「あぁ、姉ちゃんところでバイト始めたんだろ?結婚相手見つけるって意気込んでたじゃん」
「まぁそうなんだけどな」
思い出しても疲れる。
あれから一ヶ月。
バイトはほぼ雑用なのだが、とにかく忙しい。
数時間働いただけで疲労が半端ないのだ。
とはいえ、本来の目的は姉の下僕になることではない。
目的は姉の
仕事をこなすことに必死になっていたが、本来の目的を思い出し、
どこで姉が見ているかわからないので、
「あの、神原さん」
神原は「ん?」と言いながら、首を傾けた瞬間、手に持った分厚いファイルも横にした。
その瞬間にはファイルの綴じが甘かったのか、中身がバサバサっと落ちていく。
「うえぇっ」
慌てて落ちないように向きを変えようとして、逆にファイルが手から離れていく。
「あぁ!」
結果、わずか数秒で、大量の書類が宙に舞う結果なった。
その後、なぜか叶夢に神原と共に
「
「いえいえ、俺が急に声かけたから悪いんで」
「
「あぁ・・よく言われます。姉も兄も美形で勉強もできたから、お前だけもらわれっ子なんだろって」
「あ、あの?」
「
そう言って神原はにこっと笑った。
自分が女だったら間違いなく惚れてるだろう。
そこから神原と少し話すようになり、連絡先の交換までこぎつけた。
「すげぇじゃん。
面白がっている浩太を見て、次男はため息をついた。
「仲良くなると逆にあんな姉と結婚させるなんて申し訳なくて・・・」
「確かにな~。それはあるな。で、もう一人の
「あぁ。
崎矢とは神原と違って会う機会が少ない。
崎矢はフリーのライターなので、神原のように一緒に働いているわけではなく、記事のことで打合せがあったりする場合だけなのだ。
なので、次来た時には必ず声をかけなければと思っていた。
そんな時、編集長の遣いで、他のフロアに行っていた時に、たまたま崎矢を見かけた。
(これは逃せない・・・!)
「あの、崎矢さんですよね?いつも姉がお世話になってます」
「えーっと、君は・・?」
「あの、工藤叶夢の弟です。見えないですよね?ハハハ」
「あ、工藤さんの!そんなことないよ、言われてみればわかる気がする」
「今日は別の雑誌のですか?」
「いや、実は僕は雑誌の記事だけじゃなくて、色々取材して本も出してるんだよ。それの打ち合わせ」
そう言って文芸部の方を指差した。
「へぇ~!本を出すなんてすごいです!」
姉と違って謙虚な性格なようだ。
「どんな本を書かれてるんですか?ぜひ聞いてみたいです」
ここぞとばかりに
崎矢を見る限り、まんざらでもなさそうだ。
「あ~…、今日はこの後取材があって時間がないんだ」
そういうと、ポケットの名刺入れから名刺を取り出した。
「ここに携帯番号書いとくからさ、一度電話してきてよ。いつもお世話になってる工藤さんの弟なら晩御飯奢るよ」
「ありがとうございます!」
「ってことで、今度崎矢さんとご飯行く約束までしたんだよね」
「2人目ともそこまで仲良くなるとは、さすがだな」
「崎矢さんもいい人なんだよなぁ。電話で約束した時も、気を遣わせないようにって店も選んでてくれててさ」
「いい人を
「そうなんだよなぁ」
「あ、
駆け寄ってきて、「ご飯食べてるの?一緒にいい?」と荷物を置いて、昼食を買いにお店の方へ行った。
スカートがひらひら揺れている。
今日も可愛らしい。
「かわいすぎだろ・・・」
菓子パンがいつもより甘く感じる。
「
いつも殴って来る
美園が
「・・・神原さんや崎矢さんには悪いけど、やっぱり姉を結婚させるために頑張らせてもらう!」
まずは、明日崎矢とご飯に行くことになっている。
絶対負けられない―
誰と戦っているのかわからないが、闘志を湧き起こしながら、菓子パンを口に放り込んだ。
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