第2話 鬼神と鬼人
俺は死んだ。彼女に銃を放ち、そのあと自分にも撃った。後悔は、ないといえばうそになる。家族を殺され、鬼に恨みを持って鬼を殺すためにあの職業に就いた俺が
一切の活躍を見せることができずに彼女との死を選んだこと。
彼女が末期がんで死んでしまったその時に、近くにいることすらできなかったこと。せっかく生き返ったのに、完全に鬼になってしまうから先に殺せと言われたこと。これもすべて、俺がした選択であることに変わりはないんだから。家族を助けられたはずなのに、何か変えることができたはずなのに。でも、何もできなかった。
後悔しかないさ。でも、俺がしたことだ。しかたなく受け止めるしかない。もし
チャンスがあるなら俺はすべてを守ると誓う。もう一度、家族を守り、彼女を助けると。鬼を殲滅し、対鬼部隊として名をあげると。だから、もしできることなら、もう一度あの時に戻りたい。俺が死んででも、鬼になった彼女を守るから、二度と見捨てたりしないから、あの頃に戻してくれ。そう願った、その時だった。
真っ暗な空間を沈むような感覚がし、目の前が光りだした。そして、一つの声が聞こえた。
「力を望むか。」
「鬼を殺す力を望むか。」
「己が死んででも人を守るために力を使うか。」
……もしこれで、本当に力がもらえるとするのなら、俺の答えは、当然。
「望む。」
「……そうか。なら、その閉じている眼を開け、すべてを見よ。この現実を受け止め、超えた先に、貴様の力は放たれるだろう。」
そうして目を開くと、そこに広がっていたのは自分が見ることのなかった、対鬼部隊の、見るに堪えない無残な姿だった。
鬼人伝~国家の犬として働いていた俺がすべての敵を殺すまで~ くろこんぶ @shirakonbu
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