第2話 遭遇
「きゃあああああ!!!!」
目の前に突然現れた妖精の女の子が悲鳴を上げ気絶する。一体何があったのか。周囲を探るが特に何もない。一体何に悲鳴を……。
「って俺の顔か」
周囲にある窓ガラスに反射する自分の顔。それを見てすぐに理由を察してしまう。さてどうしようかと思って妖精の方を見ると気絶している。現実でも強面のせいか子供に泣かれることが多いのに夢の中でもそうなのは流石に悲しい。そんなに俺の顔は怖かったのだろうか。いや骸骨だし怖いか。
さて地面に気絶している妖精をどうしようか。起きるまで待つか。いやそういえばそもそもこの子がさっきの悲鳴の持ち主だったよな。ってことは……。
そう考えてると何か足音が近づいてくる。警戒して様子を見ているとそこに不思議な生き物が現れた。
「ネズミと……カエル?」
2足歩行のネズミとカエルだ。なんだ、あれもモンスター的な奴なのか? そう困惑していると向こうも俺に気づいたようで何か焦っている。
「おい、待て。誰かいるぞ!」
「あ、ああ。面倒だなぁ。あれ覚醒者だよな……なんでできたばかりの初心者階層にあんなベテランがいるんだよ」
覚醒者? 初心者階層? マジでゲームみたいな用語が飛んでくる。という事はモンスターじゃないのか。まさか俺と同じ人間なのか?
「ああくそ、めんどくさい! 見ろ、奴の足元、あの妖精がいるぞ!」
「本当だ。ってことは俺たちと同じ勧誘か? ずりぃぞ、そいつを見つけたのは俺たちが先だ!!」
ネズミとカエルがそんな事を言って騒いでいる。なんだ、どういう事だ。勧誘だって? 分からない事ばかりだ、とにかく情報がほしい。どうしたもんかな。
「おい、お前、どこのギルドだ! 俺たちはギルド
「そうだ、わかったらその妖精をおいていけ!」
すげぇ漫画のテンプレみたいなセリフだ。でも腰が引けている。あれか? 俺の顔がやっぱり怖いから警戒しているのか。っていうかギルドってなんだよ! マジでゲームなのか!?
情報がいる。この見覚えのある世界に対する情報が。出来るだけ穏便にいきたい。そのためにはあいつらの言う通りにする方がいいんだろう。見覚えのない女の子を差し出せば丸く収まるってわけだ。
あの口振り、多分あいつらがいるギルドってのは名前を出せばビビるくらいの大きさなのかもしれない。
でもこの子は助けてって叫んでいた。多分あいつらに捕まらないように逃げていたんだ。
俺には無理だ。……見捨てられねぇ。
親父が早くに亡くなって母さんが頑張って育ててくれた。片親だからってバカにされないように、頭のよくねぇ俺は何があっても母さんを守れるように身体を鍛えてきた。ただ負けず嫌いな性格もあってか、喧嘩を売られるとすぐに手を出しちまう。気が付けば迷惑を掛けない様にと思っていた母さんに迷惑ばっかり掛けるようになっちまった。それでも、俺だって外しちゃまずい道理くらいわきまえてるつもりだ。
いきなり手を出していい事はないって嫌って程経験してる。とりあえず適当にビビらせちまおう。
「知らねぇな。こいつは俺が捕まえた。なのになんでお前らにやらなきゃなんねぇんだ」
そういって俺は一歩前に足を踏み出すとあいつらは後ろに一歩下がっていく。
「く、くそぉ。きいてねぇぞ。なんであんなこえぇ高位の覚醒者がいるんだ!?」
「知らねぇよ! おかしいだろ? この12月ノ国にあんな奴見たことねぇよ!!」
「だから初心者なんじゃないのかよ!?」
「いやあの姿を見ろ! 初心者なわけないだろ!!
また知らない単語だ。12月ノ国だって? ここは日本じゃないのか? それに俺の姿がなんだってんだ? そんなに骸骨が駄目なのか?
「何見てんだ。さっさと失せろ。さもないと……」
図体のデカい筋肉質な身体のせいでこういう事は慣れている。だからこういう脅しも慣れてるほうだ。右のこぶしを強く握り、ゆっくり横に振りかぶる。そのまま力いっぱい俺は拳を近くの壁にハンマーのように振りぬいた。壁ドンだ。大抵の見かけだけの野郎はこれでびびる。
そう俺は軽く考えていた。
きっと軽率だったのかもしれない。
俺が拳を振るったその瞬間、目の前の空間が歪んだように見えた。そしてそのまま――。
ネズミの一歩前にいた2足歩行のカエルがまるで横からトラックに跳ねられたように一瞬で壁に叩きつけられる。カエルの体はつぶれ、そのまま粒子を出して消えていった。その場には白いキューブが落ちている。
「は……?」
カエルがいた箇所の地面が不自然にえぐれている。そして叩きつけられた壁も破壊されていた。
「ふぁ――
は? あのカエルのやつが死んだのか? 殺しちまったのか!? いや待てここは現実とは違う。いま考えるのはよせ。取り乱すな、まずはこの場を乗り切るんだ。
「さて。お前はどうする。同じように潰れるか」
「ひ、ひいいいいいい!!!!」
ネズミは落ちていた白いキューブを拾いそのまま走って逃げて行った。
足音が遠くなっていくのを感じながら俺はぎりぎり立っている状態だったため、そのまま崩れるように座り込んだ。
「……マジでなんなんだよ」
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