友人の勧め
そんな折に、声ともに出会った。
比較的連絡の取り合っていた友人に勧められたのがきっかけである。そいつはすでに大学を辞めていた。
そのころにはすでにボクもある程度の遊びも覚えて、いっちょまえに大学生活を楽しんでいたように思う。
街の遊び方も、夜の付き合い方も、なんとなく身についていた。
新宿の飲み屋街や渋谷の雑多なバーを巡り、時にはアプリでの出会いも試してみた。
今思えば、たかが知れている。
最初は新鮮だった。誰かと飲み、笑い、楽しい時間を共有することで、心の隙間が埋まるような気がしていた。
緊急事態宣言下でも、それなりに楽しめる店を見つけることはできたし、無理やり作った時間に少しの充実感を感じていた。
でも、長続きはしなかった。
次第に、相手の名前すら覚えていない会話や、二度と会うことのない誰かとの夜が、ただのルーティンのように感じられてきた。
ボクにはきっと、そういう遊び方は向いていなかったんだと思う。
面と向かって話す相手との間には明確な距離があり、僕はついぞ誰とも本当の意味で向き合うことがなかった。
当時は若かったし、傷心中でもあったから意識的にひとを遠ざけていただけなのにね。
結果として僕の中に残ったのは、虚無感だった。どれだけ飲み歩いても、どれだけ新しい人と出会っても、心が満たされることはなかった。
それはきっとただ出会うだけで、彼女たちのことをほんとうの意味で見ていなかったんだと思う。
そんなときに出会ったのが、声ともだった。
〈つづく〉
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