令和テレフォンクラブ

名▓し

『声とも』というアプリがある。

 声ともというアプリがある。

 新型コロナウィルスが猛威を振るっていた大学2年の春、いい加減ひとと話がしたくて、そんなものを入れた。


 まぁ単純にひと恋しかったのだと思う。


 上京したての当時、新宿の行き方すら知らなかったボクは、大学の誰もいない教室と自宅の往復を繰り返していた。


 オンライン授業なのだから、別に大学に行く必要なんてなかったのに。


 唯一の会話といえば、バイト先でのやりとりくらい。


 介助ヘルパーの仕事をしていた当時、話し相手といえばその利用者さんくらいだった。


 とはいえ、基本的には呼ばれたら反応するくらいの頻度である。特に雑談をするわけでもない。


 当時はただ楽なバイトを探していたから、それで十分だったはずなのに。

 だんだんと人間としての何かが消えていくようで、言い表せない感情が胸のなかにつっかえていた。


 サークルも次第に疎遠になり、「いったい何のために大学に来たんだろう?」と、考え込む日々が続いた。 いま振り返ってみると、ボクはあの頃、自分から他人と話すことを避けていたのかもしれない。


そんな折に、声ともに出会った。


〈つづく〉

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