第4話 白銀と深紅の閃光
谷町JCTを抜けた瞬間、蒼井ヒロキの視界を白い閃光が駆け抜けた。それはニッサン・スカイラインGT-R NBR34、獅童サクラの駆る車だ。その後ろに続くのは、深紅に染まったトヨタ86GT、寺田リョウの愛車である。2台は首都高を駆ける稲妻のようなスピードで蒼井のFD3Sを抜き去った。
「すげえ...」
ただ一言、蒼井は呟いた。追いかけようとアクセルを踏み込むが、2台は瞬く間に闇へと消えた。
「完全に置いてかれたな。」
隣で並走していた西野アレトが苦笑いを浮かべながら窓を開けて言う。
「仕方ないさ、俺たちはまだ彼らのレベルには程遠い。」
蒼井はハンドルを握りしめたまま呆然としていた。
牧野の挑戦
ものの数秒後、再びバックミラーに新たな光が映る。振り返ると、トヨタ86が迫ってきていた。それは牧野カレンの車だった。彼女は軽快な半ドリフト走行で一般車をかわしながら、2台の背後に追いつこうとしている。
「まさか、牧野さんも追う気なのか...」
しかし、彼女も途中で見えなくなった。蒼井と西野はペースを落とし、自然に流れ解散となった。
「また明日な。」
西野は軽く手を振ると、シルビアのエンジンを唸らせて去っていった。蒼井は一人になり、自分の車に乗って家へと戻った。
大学での議論
翌日、大学のキャンパスで西野と再会した蒼井。二人は昨日の首都高での出来事を振り返った。
「獅童と寺田のバトル、すごかったな。」
「蒼井、お前はどう思った?あの二人の走り。」
蒼井は考え込みながら答えた。
「獅童さんが俺と走った時、本気じゃなかった気がするんだ。昨日の走りと比べると、別次元だった。」
西野は頷いた。
「確かに、あれが彼女の本気の走りだ。寺田さんもあれに食らいついていけるなんて、レベルが違うよ。」
牧野の特訓
それから数日間、蒼井はバイトを終えた後、西野と共に牧野カレンから特訓を受ける日々を過ごした。彼女の指導は厳しいが的確で、蒼井のスキルは徐々に向上していった。
「もっとラインを意識して。首都高では一瞬の判断が全てよ。」
牧野の声が車内に響く。蒼井は彼女のアドバイスを頭に叩き込みながら、ステアリングを操作した。
新たな装備
数日後、寺田から連絡が入った。
「パーツが届いた。FDをスタンドに持って来い。」
蒼井はすぐに車を運び込み、寺田の指導のもとで改造作業が進められた。ウイングの装着、サスペンションの交換――全ては首都高での安定性を高めるためだった。
「これでお前のFDも一歩進化したな。」
寺田の言葉に、蒼井は感謝を込めて頭を下げた。
テスト走行
その夜、蒼井は早速寺田と共に首都高へとテスト走行に向かった。深夜の道路は空いており、絶好のコンディションだった。
「行くぞ。」
寺田の86が前を走り出す。蒼井はその背中を追いながら、新たなセッティングの効果を試した。
「安定してる...!」
ウイングがもたらすダウンフォースは想像以上で、高速域でもFDはピタリと路面に張り付いていた。
寺田がペースを上げ始める。蒼井もそれに応え、アクセルを全開にする。
初のバトル
やがて、蒼井は寺田にパッシングの合図を送った。バトルの始まりだ。
寺田はハザードランプを点滅させ、合図を返すと、一気にスピードを引き上げた。二人は息を呑むようなハイスピードバトルを繰り広げた。
「速い...!」
蒼井は必死に追いすがるが、寺田の走りは余裕すら感じさせるものだった。コーナーリング、加速、ライン取り――どれを取っても完璧だった。
「これが深紅の電撃の実力か...!」
最終的に蒼井は寺田を追い抜くことはできなかったが、その経験は彼にとって大きな自信となった。
次なる挑戦へ
スタンドに戻り、寺田が蒼井のFDの足回りを最終チェックする。
「まだまだ伸びしろはある。これからだな。」
蒼井は深く頷いた。彼の目には新たな決意が宿っていた。
「次は、必ず追いついてみせます。」
その言葉に、寺田は静かに微笑んだ。首都高の夜は、これからも彼らを待ち受けている。
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