第3話 新たな門出と試練

翌日の午後、大学の講義が終わると、蒼井ヒロキは西野アレトから聞いていた品川区のガソリンスタンドに向かった。普段は静かな町並みだが、そのスタンドだけは特別な空気が漂っているように感じた。


「ここがプロジェクトαの拠点か...」


蒼井がFD3Sをスタンドの駐車スペースに停めると、すでに待っていた西野が手を振った。


「よく来たな。リーダーに紹介するよ。」


スタンドの奥から現れたのは、体格が良くどこか風格を漂わせた寺田リョウだった。彼は静かに蒼井を見つめ、そして手を差し出した。


「蒼井ヒロキだな。西野から話は聞いている。」


「はい、本気で首都高を走りたいと思っています。」


寺田は少し笑い、手を振りながら言った。


「本気でやるなら中途半端は許されない。この車でどこまでいけるか見てみよう。」


FD3Sの改造計画


寺田は蒼井のFD3Sをじっくりと観察した。


「峠仕様としては申し分ないが、首都高ではスピード域が全く違う。まずは安定性を上げる必要がある。ウイングを装着してリアのダウンフォースを稼ぎ、サスペンションを首都高向けに調整しよう。」


「お願いします。」


蒼井はすぐに了承した。改造費の話題になると、西野が少し笑いながら言った。


「まあ、バイト代をコツコツ貯めればなんとかなるさ。」


蒼井もその言葉に笑みを浮かべた。


ファミレスのバイトと練習の夜


その日の夕方、蒼井はファミレスでのバイトをこなしていた。仕事を終えて駐車場に向かうと、そこには西野と寺田が待っていた。


「行くぞ、練習だ。」


蒼井は驚きながらも嬉しさを隠せなかった。3人はそれぞれの車に乗り込み、首都高へ向かった。芝浦PAに到着すると、そこにはもう一人の人物が待っていた。


「牧野カレンだ。今日は彼女が相手をしてくれる。」


寺田が紹介したのは、スマートなトヨタ86に乗る女性だった。彼女は微笑みながら蒼井に向かって言った。


「女だからって甘く見ないでね。」


首都高での練習


3台はPAを出発し、C1外回りへと滑り込んだ。先頭を行くのは牧野の86。その軽快な走りは、一般車を軽々とパスし、コーナーを鋭くクリアしていく。


「速い...!」


蒼井はその走りに驚きながらも、ついていこうと必死だった。しかし、途中で牧野の姿は見えなくなり、彼女に置き去りにされてしまった。


PAに戻ると、牧野が運転席から降りて蒼井に言った。


「乗ってみなさい。どこが違うのか教えてあげる。」


蒼井と西野は順番に牧野の86に同乗し、そのアドバイスに耳を傾けた。彼女の操作は正確で無駄がなく、車との対話を極めていた。


「車を信じて、もっと丁寧に操作してみなさい。」


最後のセッション


牧野によるスパルタンな指導の後、3人は再びC1外回りを走ることにした。今度は蒼井も牧野のアドバイスを活かし、スムーズな操作を心がけた。


しかし、谷町JCTを抜けたその時、背後から2台の車が猛烈な勢いで近づいてきた。蒼井はミラーを覗き込み、その圧倒的な存在感に息を飲んだ。


「なんだ、あの車たちは...近づくのが速すぎる!」


蒼井の胸が高鳴る中、物語は新たな展開を迎える予感を漂わせていた。


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