第2話 白銀の閃光とプロジェクトα

挑戦への序曲


夜の首都高は冷たい風に包まれ、車たちの唸るエンジン音が響き渡る。蒼井ヒロキはFD3Sを走らせながら、昨日の敗北を反芻していた。


「最高速が足りない...。でも、このまま引き下がるわけにはいかない。」


その夜、西野アレトのシルビアS15の背中を追いながら、蒼井は少しずつ首都高のリズムを掴んでいった。コーナーリングで培った峠の技術は生きているが、ハイスピード域での安定感に課題を感じていた。


「FDのリアが少し流れるな...。やっぱりウイングレスの限界か。」


アクセルを緩め、FDの挙動を修正する蒼井。その様子をバックミラー越しに見ていた西野は、軽く微笑んだ。


「悪くない。だが、首都高ではそれだけじゃ足りないぞ。」


白銀の閃光との遭遇


数周目に入ったC1外回り。銀座を抜け、竹橋JCT付近に差し掛かると、背後から激しいパッシングが蒼井のFDを照らした。


「なんだ...?」


蒼井はミラーを覗き込む。そこには白銀のスカイラインGT-R NBR34が迫っていた。鋭いライトと圧倒的な存在感に、一瞬息を呑む。


「譲る気はないぞ!」


蒼井はアクセルを踏み込み、西野を抜いて前へ出た。その瞬間、背後のGT-Rが猛然と加速し、蒼井に挑戦状を叩きつける。


「やるしかない...!」


竹橋JCTから始まったバトルは、瞬く間に加速していく。蒼井はコーナーでFDの軽快さを活かしてGT-Rとの差を詰めるが、直線ではその圧倒的なパワーに押し込まれる。


「くそっ、この直線じゃ太刀打ちできない!」


神田橋JCT手前。GT-Rは一瞬の隙を突き、蒼井の横をすり抜けていった。その瞬間、蒼井はその圧倒的な力の差に呆然と立ち尽くす。


辰巳PAでの対話


バトルを終えた蒼井は、西野に誘導されて辰巳PAへと車を停めた。PAの明かりの下、蒼井はFDのボンネットに手を置き、敗北の余韻に浸っていた。


「今のGT-R、一体誰なんだ...?」


蒼井の問いに、西野は肩をすくめながら答えた。


「獅童サクラ。首都高最速の女だ。通称『白銀の閃光』。今のところ、誰も彼女には勝てていない。」


その名前を聞いた瞬間、蒼井の胸に悔しさと興奮が同時に湧き上がった。


「俺が、あのGT-Rに勝つにはどうすればいいんだ...」


西野は真剣な表情で蒼井を見つめた。


「まずは、車のセッティングだな。そして、走り込むこと。だが、1人じゃ限界がある。」


プロジェクトαの誘い


西野は続けて言葉を紡いだ。


「俺が所属してるチームがある。『プロジェクトα』って言うんだ。いろんなタイプの走り屋が集まってるチームだ。お前も来てみるか?」


蒼井は少し考えた後、頷いた。


「興味がある。俺に足りないものが分かるかもしれない。」


西野は微笑み、蒼井に握手を求めた。


「じゃあ、明日大学が終わったら品川のガソリンスタンドに来い。そこが俺たちの拠点だ。」


次なる挑戦へ


その夜、蒼井は帰宅後も獅童のGT-Rの走りを思い返していた。FDのセッティング、そして自身の技術――全てがまだ未熟だと痛感していた。


「必ず強くなる...」


そう心に誓い、彼は眠りについた。


翌日、新たな挑戦が蒼井を待ち受けていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る