第2話 ドレ


 渡ったら直進が続く。

 車通りが多い道を進んで突き当たりまでおよそ百五十メートル。

 そこまで来たら目の前には林のような緑溢れる場所がある。

 どうやらそこは公園らしい。かつてはアレが作られてきた場所だったようだか、アレの禁止に伴い今や公園になったのだとか。

 面積も広く、中には十七カ所のレストランもあると言う。いや、そういえば先月もう一店舗レストランがオープンしたから十八カ所かも。


 アレが無くなっても、別のものが産まれるがアレは無くても良かったものと思われたくない。

 ここを通るたびにそう思うのだ。



 そんな公園を左手にしてさらに歩く。

 目的地はもうまもなくだ。



「ありがとうございました〜」



 客が出てきたのでケーキ屋の扉が開いた。

 甘い香りが店の中から溢れる。

 昔、アレもここで食べた。特にチョコとの相性がよくて、チョコスポンジにホイップクリームもアレが載ったら最高だった。

 アレがなくなったため、今はもうこの店に入っていない。

 でも、アレが食べたい。アレを乗せたケーキが。



 さらなる決意を胸に。今度こそ向かう先は自宅。

 小さなアパートの一室に暮らしている。

 狭くてもやりたかったことを続けていた。

 やりたいことはそう、アレを再現すること。

 記憶の中のアレを呼び起こして、様々なもので再現を図った。

 味覚、触覚、視覚。すべてを満たすものを作りたい……から、仕事を辞めてまで研究し続けている。


 最初はアレがなくなったから、代替品を探してみた。そうしたらアレと見た目がそっくりなアレも世界から消えていた。アレも気候変動に耐えられずに絶滅したようだ。

 栄養価で見れば、アレの代替品としてリンゴやキウイもある。けれど、アレから味が遠ざかっている。


 さてどうするか。

 アレに近い栄養価、アレに近い触感、アレに近い味。うん、難しい。

 研究は何年も、何十年も続いた。

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