第二章:ノートパソコンから見つけた父さん

ある日、母さんが居眠りをしている間に、ぼくは使われなくなった書斎に忍び込んだ。そこには古びたノートパソコンが置いてあった。母さんが「ぴのこはんが最後に使ってたやつ」と大事にしていたものだ。


ぼくはそのパソコンを起動し、デスクトップを開いた。すると、そこには父さんが書いた数々の小説のデータが残されていた。


「これが、父さんの…」


ぼくはファイルを開き、読み始めた。そこには父さんが書いた奇想天外なトドオカという54歳の男性の物語が、またはたくさんのアイデア、奇抜な視点で描かれた様々なホラー小説の短編が詰まっていた。そして、見つけた構想メモには、父さんがどんな考えを抱えていたかが詰まっていた。そして気づいた。


父さんだって、決して「母さんの理想のぴのこ」じゃなかった。


メモ書きの中には、父さんの迷いや葛藤がそのままに記されていた。仕事をサボって執筆をしていた罪悪感、作品が読者にどう受け止められるのかという不安、そして何より、「自分のやりたいこと」と「期待されること」の間で揺れていた気持ちが書いてあった。

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