第一章:父の影、母の期待
「ねぇ、母さん、なんでそんなに父さんのことばっかり言うの?」
夕食の席でぼくが尋ねると、母さんの手がピタッと止まった。
「ぴのこはんは、うちの人生そのものやったからや。」
母さんはいつもこう言う。父さんがどれだけすごい作家だったか、どれだけユニークで、どれだけトドノベルを愛していたか。
「でも、ぼくはぼくだよ。父さんみたいになりたいわけじゃない!」ぼくはたまらずに声をあげた。
すると、母さんの目は鋭く、恐ろしくなった。
「ぴのた、そんなん言うてええんか?お前の身体にはぴのこはんの血が流れてるんやで?その血を、才能を、お前は無駄にするんか?」
ぼくは何も言い返せなくなる。父さんのことをなにも知らないから、母さんにとやかく言える立場じゃないのかもしれない。
でも、心の中ではどうしても納得がいかなかった。
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