ジェネリックぴのこ

しゅんさ

プロローグ:ぴのこの遺産

ぼくの名前は「ぴのた」。父さんの名前をちょっとだけもじった名前だって母さんは言っていたけれど、正直言うとあんまり気に入ってはいない。だって、僕は父さんのことを知らないんだ。父さんはぼくが生まれる前にチュパカブラに食べられて亡くなっていたから。


でも、父さんの影はどこまで行ってもぼくを追いかけてくる。母さん、がらどんどんのせいだ。


「ぴのた!あんた、まだ原稿書き終わってへんの?今日のノルマは4000文字言うたやろ!」

がらどんどんは怒鳴るとき、ものすごい迫力がある。イノシシのマスクこそもうかぶっていないけれど、目つきが同じくらい鋭いから、それだけで十分怖い。


「わかってるよ!でも学校の宿題だってあるんだ!」

ぼくが抗議すると、母さんはすぐに答える。


「そんなん知らん!ぴのこはんやったら宿題なんかほっぽり出して小説書いてたわ!」


そう、母さんはぼくのことを「ジェネリックぴのこ」として育てたいらしい。父さんみたいに、トドノベルで称賛されるような立派な作家になれって。でも、ぼくには父さんのような才能なんてあるのか、正直わからない。

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