第3話 クエスト
「ふぅ、腰いて」
俺は馬車を引きながら腰をさする。ずっと座りっぱなしだったから結構腰に来るな。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。それよりお前は寝てなくて良かったのか?」
俺は隣に座るアリエスを見る。するとアリエスはニコリと笑った。
「うん。いつもありがとね」
「別に構わねーよ。それよりそろそろ着くから2人を起こしてくれるか?」
「分かった」
アリエスは後ろへ移動して2人の体を揺する。
「2人とも、そろそろ着くって」
「ん、着いたの?」
「思ったより早かった」
2人は目を擦って起き上がる。俺も目的地に着いたので場所を止めて降りる。
「ほら、2人も早く降りろよ。行くぞ」
「はいはい」
イレーゼは素直に降りた。問題はシャリアだ。まだ、起きたくないのか馬車の中でゴロゴロとしている。
「シャリアもクエスト行くから早く降りてこい。置いてくぞ」
「ん」
「ん?」
「歩くのしんどいから運んで」
手を広げて運べと伝えて来る。はぁ、全くしょうがないな。
「ほらよ。行くぞ」
俺は背中にシャリアを乗っけて先先と進んでいる2人の元へ向かう。
「ん、ご苦労」
「放り出してやろーか」
「冗談。ありがとう」
「お前も素直になったな。俺が最初に入って来た時なんか、もごっ」
後ろから手を回されて口を塞がれた。どうやらこいつからすれば最初の会った時の記憶はあんまり思い出したくないようだな。
「忘れて」
「いやいや、あれは忘れたくても忘れることなんかーー」
「忘れないならラルクの本棚の奥にあった薄い本を2人にバラす」
「いやー、どんな出会いだったけ? 俺最近忘れっぽいからなー」
何でこいつ知ってるんだよ。ベッドの下に隠そうと思ったけどあえて本棚の奥にしまうという高IQプレイをしたのに。流石に伊達に長く生きてる訳じゃないってことか。
「あ、遅いよ2人とも」
「悪い。シャリアを連れて来るのに手間取った」
「ふふ、シャリアって子供っぽいよね」
「むっ、私は大人。この中で1番年上」
イレーゼの言葉にシャリアは顔を少しむくませる。どう見ても1番年上には見えない。と言うか1番年下にさえ見えて来る。
「この前だってラルクの部屋でーー」
「おっとー! 早くクエストに行かないとやばいよな! さっ、早く行こうぜ!!」
俺はシャリアをおぶったままで目的地までダッシュした。
〜〜
「あー、今日は結構良い天気だな」
「……そうだね」
「あー、イレーゼさん? ちょっと聞いても良いか?」
「んー? 何を?」
「何でお前ら不機嫌になってんだ? それとさっきからちょくちょく脛を蹴るのはやめてくれない? 痛いんだけど」
「べっつにー? 私はラルクがパーティメンバーに手を出すような人だったから呆れてるだけだけどー?」
「いやいや! 出してないから!」
一体いつ俺が手を出したと言うんだ。全く、女性経験皆無の俺がそんな度胸ある訳ないだろ。みくびらないでほしいものだ。
「じゃあ、ラルクの部屋で何してたの? やましいことがないなら言えるでしょ?」
イレーゼは顔をズイッと近づけて来る。確かにやましいことはしていない。だが、言ってしまえば俺の名誉は他に落ちてしまうだろう。だが、言わないと、2人の機嫌は直らないままだ。
「………絶対に周りに広めるなよ?」
俺は念を押しながら小声で話す。
「実は、その……俺の部屋に隠してあった薄い本がシャリアに見つかった」
「っ!! ………へぇ、なるほどねぇ」
イレーゼは面白いものでも見るかのように俺を見る。やっばい、なんか嫌な予感がするぞ。
「おい待て。俺言うなって言ったよな? 本当に言わないよな!?」
イレーゼからの返答はない。ただ、俺に微笑みかけるだけだった。
「ねぇねぇ、アリエス。さっきのって」
「あ、終わった」
イレーゼはアリエスに耳打ちした。全部バレてしまった。俺の名誉は地に落ちてしまった。
「そう言うことだったんだ」
俺のエロ本情報はパーティ全員に伝わってしまった。
パーティを抜けたい俺vs引き留めたい彼女たち クククランダ @kukukuranda
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