番外編 「もう一つのプロローグ」

ーーこれはこの世界を賭けた最後の戦いだ


 魔王城内にて勇者一行と魔王は争いを繰り広げていた。

 前衛には武道家の女の子がいる。が、武道服はボロボロとても動けるような状態ではない。

 後衛には緑色のとんがり帽子を被ったヨボヨボの老賢者、しかし鋭い目で敵を睨みつつ勇者の攻撃力を上げている。

 となりには祭服をまとった僧侶である少年が、最後の魔力を使い、勇者の体力を回復した。


 魔王は勇者から目を離さない。勇者の剣は煌めき始めているからだ。


「その技で我を滅ぼせるとでも?」


「ええ、これで全てに決着をつけましょう。」


 魔王が勇者に迫る。先に攻撃を仕掛け、勇者の技を封じるつもりであった。


「ッッ隙だらけだぞ、魔王ーーーー!」

 武道家は動いた。

 その踵を油断した魔王に落とすために。


「ッ!」


 魔王は咄嗟に振り向き、すんでのところで受け止めた。直撃していたら、膝をつき、勇者の剣で薙ぎ払われていただろう。だが防いだところで勇者の攻撃は避けられないことは確定した。


「ぐわッ!」


 その一撃は勇者の体力を削って放った斬撃。致命傷は免れても、もはや反撃はできない。


「今度こそとどめにしよう」


 そしてこの戦いは勇者の勝利で幕を引く・・・はずだった。


「魔王様!ついに次元の向こうに行ける装置が完成したよ!!」


ドン!と入り口から元気よく魔王の手下がドアを壊し、大声で叫んだ。


「フッ、間一髪ってとこか。だが、最初の計画は遂行したな。」


 そんな言葉を発したと共に、魔王はその手下の元に微かに残っていた力を振り絞りワープした。


「我をその次元の向こうへ連れて行け!」


 その言葉を聞き、その魔王の手下は魔王城にある研究室へ猛烈な勢いで走り出した。


「・・・逃がさない!」


「待つんだ!フォルティア!」


 フォルティアと呼ばれた勇者も力を振り絞り追いかけた。ここで魔王を逃がしてしまえば、戦いは続いてしまう。


 勇者は魔王の気配に捉え続けたが、距離は縮まらず、研究室にたどり着いた。


(ここは扉が開かなかった場所・・・)


 目先には紫色に光るゲートと思われるものがあった。


「この期に及んで、あなたは何をするつもりなの!」


「聞きたいか?いいだろう。ところでうぬはこの城内を探索しどう感じた?」


「・・・?中は思ったより綺麗だったけど、こんな広い部屋とか装飾品をよく掃除できるわね?使用人なんて見当たらなかったのに・・・」


「誰が内装の話をした!・・・が、後者の部分は核心をついていたぞ。そうだ、ほとんどの魔物はもうここにはいない。なぜかわかるか?」


「まさか、そのゲートの先に?その先には何があるというの?」


「フッ、聞きたいか?聞きたいだろう?聞きたいよな?いいだろう!教えてやろう!」


 魔王は昂り、高笑いしたあとニヤリと


「この先にはうぬらの神とやらが作った世界がもう一つある!そしてそこにいる人間は魔力を持たない!あとはわかるだろう?」


「あなた、まさかその世界の人間を全て魔物にするつもり!?そんなことさせない!」


 勇者は決意の言葉を放った。しかし、魔王は不敵に笑う。


「フッ、『そんなことさせない』か…?我が目的を淀みなく喋る理由まで頭がまわらないようだな?」


「・・・!!」


勇者は時間稼ぎだと理解し、魔王を討とうと近づくが・・・


「ではまたな勇者よ。再び会う日を楽しみにしてるぞ。」


「待て、魔王ッッ!!」


 こうして勇者と魔王はゲートに入って行き、世界から消えた。


ーーこれは三つの世界を賭けた最初の戦いである

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