第10話 ドラゴン娘ドワーフの、不可解な真実
グリムは、寝室で一人うずくまり、昔のことを思い出してしまう。
『お父さんは、どうしてうろこがあるの?』
『しらん、逆になぜ貴様には、鱗がない』
『しらん! ぎゃくになぜ、お父さんにはうろこがあるー?』
『……寝る』
『わたしもー』
ドラゴンの鱗は、暖かくぬくもりを感じた。ぶっきらぼうであるがドラゴンである父は、私を食べる訳でもなくただ優しくそばにいてくれた。
『飯の時間だ、食え』
『にく、きらい。おともだちかもしれない』
全ての生物と会話のできるグリムにとって、肉や魚などの動物性たんぱく質は、食べるのも恐ろしいものであったが、ドラゴンはそれを許さなかった。
『食わなければ死ぬ。食らえ』
『ヤダ! だって、みんないたいいたい、や!』
『いいか、食らうということは、そのものの命を、人生を糧に生きていくというものだ。敬意を払い食らった命の分も生きて行け。それが礼儀であり生きるということだ』
『う……うう……、い、いただきます』
くうっと腹の音を鳴らし、目の前の焼かれた肉を前に、グリムは我慢ができずに焼かれた肉を一切れ持つと泣きそうになる目をこすりながら、一言いただきますと、食材に敬意を払いその肉を口に含む。
『どうだ? 堪らなくおいしいだろう』
『うう……おいしい、おいしい……』
『そうか、ならおとなしく食べろ』
こうして、グリムは、嬉しそうに目を細めるドラゴンのおかげで肉や魚を食べることを克服し五年の月日が過ぎた頃であった。
父が離れた間、グリムは、探索者に保護をされた。最初は、父から引き離されることに抵抗をしたが、探索者の魔法で眠りにつき、気が付くとそこは、冷たい無機質な床、ガラス張りの部屋であった。
『魔物と意思疎通ができる少女……魔法でもなければ科学でもない。この現象は、現首脳長であるアザート様の無限に沸く魔力と同じ魔法や科学で証明できない現象、不可解な真実(インポッシブル)……ああ、これを証明すれば』
『ねえ冷たい。お腹すいた。お父さん……どこ』
『おお、人の言葉を聞いたのは初めてなのに、すでに我々の理解できる言語で話しているぞ! これはすごい!』
『ねえ、私、お腹すいた!』
研究員は、グリムの言葉になど目を向けず話し出す。
グリムは、その日、冷たい床にまるで物のように眠る。
でてくる食事は、単色の何か分からない食べ物。味もしないおいしくない食べ物であったがドラゴンの言いつけを必ずグリムは守る。
『いただきます』
味も触感もない食べ物にすら思えないものにも私は、敬意を払い、その生活が一年続き、違う人間に助けられ、私は、孤児院に預けられた。
そこではシスターの人は優しくしてくれたが、子どもは違った。
『バケモノー! また動物とお話か!』
『痛い……やめて……』
『わー! 化け物が泣いてるー』
『こら! 大切な隣人をいじめるんじゃありません!』
そんなグリムを孤児院のシスターは、守ってくれ、どうにかやっていけていたのだが、ある日事件が起きた。
『ああ、どこなの!』
『……』
シスターが私をいじめていた子供の一人が夜になっても帰ってこないと孤児院は大騒ぎ。
グリムは、自分のイジメていた男の子であり、探す気はなかったが、一匹の鳥が飛んできて私に話しかけた。
『オ前の仲間……、森で襲われていたぞ!』
『!』
グリムは、その鳥に案内され、森の中に行くと、そこは比較的小さな未発見のダンジョン、そこから出てきた大きな蛇とグリムをいじめていた男の子がいた。しかし、怯えてしまい腰が抜けその場に座っていた。
そして少年は、私に目を向けると助けを求めるように手を伸ばすが、瞬間の蛇に捕食される……と思ったが、蛇は、男の子をおもちゃのように尻尾で飛ばしてボールのように扱う。
理解ができなかった。
『あなたは、その子を食べるの?』
『タベる? ちがう、ヨワイだからオデのおもちゃ』
瞬間何かが切れる音がした。
食べるための殺しは生きるための神聖な行為。では、このモンスターは、なんなのか。
そこからグリムの記憶はない。ただ勇逸覚えているのは、血を吹き出し、肉片に変わったモンスターと怯え切った男の子、そして。
『みんな……だい……』
『センセ、みつけタヨ……』
『きゃああああああああああああああああ!』
ただ悲鳴を上げ怯える私に優しいシスターであった。
その時、私は気が付いた。
「私みたいな半端モノは、……お父さんの所でしか過ごせないんだ」
グリムは、過去を思い出し涙で枕を濡らした。
魔王様は、亜人や人を愛でるため、ダンジョン攻略専門学校の教師になりました。 優白 未侑 @siraisi
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