第7話 先生とダンジョンおさわり会
ダンジョン、世界中の中いたる場所に出現し、人類のまだ知りえない英知とモンスターのダンジョン外への搬出による災害をばらまく厄災。そんなダンジョンは、人工島アトランティスにもモンスターの搬出が完全に停止したが稼働し続ける練習用のダンジョンがいくつかある。
その中でも一番初心者向けの洞窟型ダンジョン篝火。
その第一階層にxクラスの生徒が学校指定ジャージに各々の装備をして正輝のもとに集まっていた。
「よし、じゃあ今日は、実戦形式での授業だ。全員準備はできたか?」
「えへへ! ばっちり!」
彦芽は、関節部へのプロテクターに拳には金色の籠手を装備したシンプルなスタイル。
腰には投てき用であろう鉄球が三個装備されていた。
「うん、彦芽は、シンプルでわかりやすいね。その腰の弾は、爆弾? 密室だから火力はあまり控えているかな」
「ううん、これはただの鉄球だよ! これなら、後で回収すれば何度でも使えるし時代はエコなんだよ先生!」
「……そ、そうか」
ダンジョンでの武器で鉄球を使っている人を見たことのない正輝は少し引き笑いをするが、彦芽であれば、十分に武器になりえるのだろう。
流石は、脳筋と言いそうになるが、正輝は、 何も言わずにグリムに目を向ける。
「完璧じゃないんだから! 別に我ながら最高なんて思っていないし!」
グリムは、軍用のバリスティックシールドに片手トンファー、タンクにしたとしてもモンスター相手に火力が少し足りない気もした正輝は、心配してしまう。
「グリム、そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫な訳ないじゃない! 問題ないだけよ!」
「まあ、問題はないけど……銃もないから心配なんだよな」
問題はないのだが不安だ。
グリムは、モンスターを殺せない。殺さない装備だとしても、あまりに心もたないものであった。
「せ、先生! わ、私はどうですか!」
光珠は、自分の装備を自慢するように正輝に見せるが、正輝は、デザートイーグルと、ダンジョン用の日本刀を装備した光珠は、良くあるダンジョン標準装備であり正輝はほっとして褒める。
「うん、普通で良いと思うぞ」
「ふ、普通……! がく……勇者は異彩を放つものなのに……」
「うーん……異彩を放つなら、あれぐらいやらないと」
「何、先生、文句ある?」
アンテナが付いた自動運転の装甲車の上で自分よりもデカい鞄に腰を掛けスマホをいじるセラは、愛銃のモシン・ナガンと小さなスイッチのついた機械を腰にかけていただけであった。
ダンジョンに行くのに装甲車はあり得ないものであった。
ダンジョンは、決して全ての道が広いわけではないそのため車両を使った攻略は、現在行われていないのであったが、セラは完全無視してアンテナ付きの装甲車に乗っていた。
「装甲車は少なくとも置いて行きなさい、後カバンの中には何が入っている。持っているものはなるべく減らしなさい」
「装甲車は無理。ダンジョン内でギャンブルができなくなる。それにカバンの中には、各種ギャンブル用の専用スマホが……って先生! きゃあ! 先生! 耳、触んな!」
正輝はセラの手を引くと、自分の所まで抱き寄せ、セラの耳を愛おしそうになでた。
「返してきなさい。あとギャンブルは、授業中は禁止。これは、ふへへへ」
「いいな、セラちゃん、先生にかまってもらえて」
「いい訳ないじゃん! セクハラ! 教師のセクハラ禁止!」
嫌がるセラを羨ましそうに見る彦芽、その反応が普通だよなと安心する光珠とマイペースに自分の盾を整備するグリム。
正輝は、装甲車に不要なものを全ておいて妲己に回収を依頼し、セラの耳を満足するまで撫でた後に改めてきりっとした表情で話す。
「これよりダンジョン実習を始める。練習用のダンジョンだとしても気は抜くな、モンスターは容赦なく俺たちを襲うからな」
「変態が急にそんな表情しても信用できないですよ」
「う……うう……耳をあんなに触られたのは初めてだったのに」
「いいな……彦芽も撫でて欲しい」
「なでて欲しい別に私じゃなくてよかったとは思ってないし!」
それぞれ言いたいことを好き勝手に言うのだが、正輝は咳払いをする。
「ごほん! では、配置は前衛にグリム、彦芽、モンスターを殲滅、後衛のセラに絶対近づかせるな。光珠は、中衛で前衛と後衛のサポート、足りないところをフォローするから一番大切なポジションだ。それでセラ、後衛で、狙撃のサポート。弾は当てなくてもいい、牽制をして、ダンジョンの二階層を目指す。いいか?」
ダンジョンでの配置の説明をする正輝であったが、セラは不思議そうに手をあげる。
「はい、先生。別に私たちは、ブーストの魔法で防ぐけど先生はどうやって攻撃を防ぐの? 武器とか持ってないけど」
「それは大丈夫不思議パワーでどうにかなる」
「? 別にいいけど、実習とはいえ私たちだって先生を守りながら、動けないからね」
「ん、気にしないでいいぞ」
ティたんのことを話さない正輝。
ティたんは、魔王に仕えた唯一の電子妖精、気安く光珠に見せたことをエルバに怒られた正輝は、ティたんを隠していた。
存在を唯一知っている光珠も生徒会にその存在を口外しない誓いを立てたようで話す気はない様であったが、光珠以外の生徒は、あまり納得していなかった。
「別にいいけど……死ぬわね。死なないでね先生」
「先生、体が動かなくなったら彦芽が一章お世話してあげるから安心してね」
「……さ、さあ行こうか!」
正輝はごまかすようにダンジョンを歩き出すと光珠たちが慌てて後ろを追いかけていく。
そんな光景を見てボソッとティたんが恨み節をつぶやく。
『正輝様、私は昨日のことまだ根に持っていますから。エルバの足止め大変なんですよ……あんなに強くなってしまって』
「ご、ごめんって……」
『小豆ミルクと百家園の抹茶八つ橋で手を打ちます』
「う……わ、分かった」
百家園、アトランティス最大の和菓子屋で食材にこだわった最高級八つ橋の出費は中々痛いものであったが、ティたんの機嫌を損ねない為、正輝は渋々その提案を了承したのであった。
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