第2話 僕たちの家
「はあ……、イテテテッ………今日のは結構痛かったな」
辺りはだんだんと闇に包まれてきた。僕は帰宅するために魔法学校を後にしていた。今の時期は寒くて手がかじかむ。
といっても、僕が帰る『家』は孤児院なのだけれど
僕の親は僕がまだ言葉も話せない頃に死んでしまったらしい。その後施設に預けられたので、人生のほとんどは
僕がほとんど毎日いじめられているのは、僕の実力のせいだ。
スキルが弱くたって、魔法の質力や緻密さ、運動能力が並外れて高かったりしたら、こんなことにはならなかったと思う。
実際にスキルがすごく弱いけど魔法が上手で、僕が住んでいる国、エギルド王国の魔術部隊の中でリーダーを務めている凄い人もいる。
なのに僕は………
僕は空中に向かって【固有スキル】を放つ
魔力が『スキル回路』を通って、身体の外にスキルが出現するのが分かる。が、
「…………はあ、やっぱり何も起こらない」
このスキルを放っても、何も起こらない。ダメージが入るわけでもなく、相手の動きを妨害するわけでもなく、自分の力が上がるわけでもない。ただ、魔力を消費するだけの『ハズレスキル』なんだ。
沈む気持ちを振り払うように、息をフッと吐くと、そのまま家へ走っていった。
―――――――――――――
「…………ただいま」
僕が孤児院のドアを開けると、目の前に誰かの手が伸びてくる。
「ロスタ〜〜〜ぁ!」
ドアの奥にいたのは、僕の幼馴染。僕の顔を見ると途端、笑顔になってハグをしてくる。
そんな笑顔を見れば、僕の顔も自然とほころぶ。………まあ、ハグはちょっと恥ずかしいけど。
「ああっ!ロスタ兄帰ってきたぁ!」
この孤児院には十数人の子供たちが住んでいる。この子は僕とレイフィアに次いで、三番目の年齢の、ミール。彼女の声に反応して、その他の子供たちも次々と玄関に集まってくる。
「あははは、皆ただいま、ほらほらここだと寒いからあっち行こう」
「「「「はーい」」」」
子供たちをリビングの方へ移動させると
「ロスタ、今日の夜ご飯担当は私だよ?早く食べてみてよ!」
レイフィアが上目遣いでせがんできた。僕はそんな彼女にすこし心臓がドキドキしてしまうも、「うん」と返事をして椅子に座る。
「「「「いただきます」」」」
僕が木のスプーンでレイフィアの作ったシチューを食べると、レイフィアが「どう?」と聞いてくる。
「うん、おいしいっ」
「……!よかった!」
レイフィアは、言葉で表すと「ぱあっ」という表情で、少し頬を赤らめてはにかめば、隣に座っていたミールが、ジト目で、そして口角を少し上げていた。
「ほらほらロスタ兄にレイフィア姉、イチャイチャしてないで早く食べなよ〜」
「「……っ!?」」
―――――――――
僕は自分の部屋(レイフィアも同室)に行くと、少し古いベットにダイブする。ベットからギィィと、悲鳴が聞こえた。
もう少し新しいベットで寝たいという気持ちはあるが、この孤児院には僕含め十数人という子供たちがいるのだ。そして、僕達を男手一つで育ててくれているお父さんのことを考えると、決して口には出せない。
僕がもっと強くなれば、王国の騎士団か魔法部隊に入れるのに……。そうすればお金もたくさん稼げる……だけど、僕は
「――いや、うじうじするな僕!レイフィアにだって負けないくらい強くなってやる!」
窓から見える満月に手を伸ばし、ぎゅっと握りしめる。そのくらい高みに登るために。
そして、はあっ、と腕を脱力すると、自分の行動を顧みて布団に包まる。
……………男にはちょっとカッコつけたい時だってあるんだよ!
―――――――――――
ちょこっと解説 (*´∀`)
◯【スキル】と【固有スキル】と【魔法】の違い
【スキル】は、一応は誰でも習得可能なスキル。
【魔法】のような炎を出したり水を出したりするものではなく、もっと複雑な、例えば自分を透明化させたり、足音を消したりするスキルや、魔法の六属性(炎・水・風・土・光・闇)以外の不明な属性の攻撃などが【スキル】と呼ばれる。
頑張れば誰でも習得可能だが、習得に何十年もかかるものもある。習得時間にはかなりの個人差がある。
【固有スキル】は、5歳になると神から貰えるその人特有のスキルであり、頑張っても他の人の固有スキルを習得することはできない。同じ固有スキルを習得している人が一人とは限らないが、確率は限りなく低い。
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