俺のスキルのチートさを異世界人はまだ知らない。
ぽていと。
一章
あれ、俺のスキル強くね?
第1話 プロローグ
これは、とある学園での日常だった
「おいロスタぁ〜、これ先生のところに持ってけよぉ」
「えっ……ごめん、ちょっと忙し―――」
少年が口を開く、刹那、何もない空中に、炎が出現した
「ああああああっっ!!」
その炎は少年を、焼いた
「ハハハハハッ!じゃあ、よろしくな雑魚野郎」
炎を生み出した張本人である、ガタイのいい男は、笑う。
嘲笑うように。貶すように。
ハハハハと周囲に笑い声が響く。
――――その少年はいじめられていたのだ。
名を『ロスタ・フィル・アナトミア』と言う
少年は俯き、肌を焦がしながら立ち尽くしている。やり返しはしない。やり返したいのに、そんな力なんて無いことを知っていたから。
底辺の少年だから
――――――少年は、鈍才だった。
この世界には魔法がある
魔法とは、生物の身体に流れている『魔力』を『魔法回路』という意識の回路を通して現実に出現させる技である。
先程の炎も、『炎魔法』を使ったため何もない空中から炎が出現した。
炎の他にも水や風、土、光、闇があり、これらは合わせて『六属性』と呼ばれている。
魔法の他に、この世界には、5歳になると神から『固有スキル』を貰えるという
少年の固有スキルは、『異端種』と呼ばれるこの世界の言葉ではないスキル名だった。
『異端種』のスキルは、100万人に1人獲得できるかどうかといった確率だということが研究によって分かっているため、非常に珍しく、少年もこの『エンブリム魔法学校』に入学した際はとても好奇の眼差しで見られていた。
そう、1週間だけは
――エンブリム魔法学校
それは、世界でもかなり有名な学校であり、5歳で入学、17歳で卒業する学校だ。入学して1週間後に『固有スキル判定試験』があり、そこで自分の実力を生徒全員に見せつけることができる。
少年は非常に稀な『異端種』の持ち主だったので、過度な期待をされていた。そこにいた全員が、「強者」が生まれることを期待していた。
だが
―――――――少年は弱かった
少年が固有スキルを発動すると、辺りは静まり返った
が、何も起こらなかった
なにも出現しなかった
炎や水、この世界にはない物質が出現するわけでもなく、運動能力が上がるわけでもない敵の能力が下がるわけでもなく、特殊な何かが起こるわけでもない。
そう、何も見えない、何のダメージも与えられない
それは、『異端種』であり、しかし『ハズレスキル』だったのだ。
―――――少年は、いじめられた
『異端種』なのに、『ハズレスキル』だと。
だが、現在よりはまだマシだった。少し揶揄われたり、悪口を言われるだけだった。
だが少年は、魔法の才もなかった。
運動能力は多少あったが、それでも中の上程度であり、そもそもいくら運動能力が高くても魔法やスキルのあるこの世界では、ほとんど意味がない。
いじめは、皆の年齢が上がっていくたびに過激になっていく。
最初に魔法の実験台になったのは、『魔法学校六年生』、実際の年齢だと10歳の時だった。
少年は流石に腹が立ち、やり返そうとしたが全く刃が立たず、結局ボコボコにされた。
一回起こったことは、何回も起こるのだ。
それからは日に日に魔法の実験台にされる事が増えていき、1ヶ月後にはもう毎日のように魔法を食らっていた。
だが、そんな少年にも味方がいた
「っ………!ロスタ!!」
腰まである長い、少し水色がかった白髪を揺らしながら、ロスタの幼馴染
『レイフィア・クリオス・アグネメイド』が彼のもとに駆けつけた
「ロスタ!大丈夫!?」
「………う、うん、大丈夫だから……気に、しないでいいよ………」
レイフィアは息を切らしながら、その美しい碧眼で幼馴染のことを心配そうに見つめる。
それだけなのにロスタは、今までの辛いことなんて全て吹き飛んでしまった。どんなに強力な回復魔法よりも心を癒してくれた。
だが、身体に受けた痛みは吹き飛んではくれない。痩せ我慢をするロスタにレイフィアは顔をしかめる。そして立ち上がると
「次は誰なの?毎日毎日、ロスタをいじめて………」
ロスタに向けた心配そうな目とは裏腹に、殺気の籠もった眼差しをガタイのいい男に向ける。レイフィアは可愛らしく、整った童顔をしているが、相手を睨む彼女の姿はまるで魔物のようだった。
「ひっ…………!」
先程までの威勢はどうしたのか、まるで怪物に武器を向けられたかのように縮こまる。だが、それもそのはず
―――――レイフィアは強かった
エンブリム魔法学校には『学年別実力順位』があるのだが、レイフィアは毎年3位以内、今年は2位に入っており、『全学年実力順位』でも上に4学年いるにも関わらず10位以内にランクインしている、『強者』だった。
レイフィアは無言で炎魔法を放つ
「ギャァァァ!!!」
服や肌を焼きながら燃える炎の音と、教室中に響く叫び声を聞きながら、レイフィアは言い放つ
「ロスタに撃った魔法のお返し……次、ロスタに何かしたら許さないから」
ロスタをいじめる人がまた一人、減った
しばらくして教室内が、静まり返る
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