第二章・そして再会
それから四年後の春。
俺は東京の雑踏の中、ふと足を止めた。
「あれ……柚希?」
背中越しに見えたのは、間違いなく彼女だった。黒髪を短く切りそろえた大人びた姿。でも、目元の優しさと笑顔の端っこに残る愛らしさは、俺の記憶の中の彼女そのままだ。
「……匠?」
彼女もこちらを振り返り、目を丸くした。
奇跡だと思った。もう会えないと覚悟していた彼女が、目の前にいる。それだけで胸が高鳴る。
「久しぶりだな。元気……そうだな。」
間抜けな言葉しか出てこない俺を見て、柚希は少し微笑んだ。
「うん、元気だよ。」
その後、二人は言葉少なに近況を語り合った。でも、どうしても聞けなかった。あの日、柚希が言った「最後の嘘」の意味を。
それでも、会話の最後に彼女は一言だけこう言った。
「ねえ、匠。あの時、本当は……私も別れたくなかったんだ。」
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