Epilogue

「__こうして世界樹の上に築かれた偽りの楽園は滅びたというわけさ」

 本を閉じて、男は満足げに微笑む。少女は首を傾げた。

「天使なのに、今は悪魔って呼ばれてるのですか?」

「元を辿れば彼らは神が創った泥人形だからさ。彼らの涙は水晶に、髪を抜けばダイヤモンドに__しかし美しさを競い争いが起きるようになってから怒った神が皆砕いてしまったのはこのまえ話しただろう?」

「だから偽りの天使たちの亡骸が悪魔の血ディアーサンと呼ばれているのですね」

「ああ。ここら辺はややこしいからね、明日また復習しよう」

「はい、先生」

 少女を見送り、先生と呼ばれた男は息を吐いた。窓の外の大きな木を見上げる。

「今なら不思議と、君の気持がわかる気がするよ。僕も__君と同じく手折られた枝だからだろうか?」

 嗤って男は失楽宴と書かれた分厚い本を置いたのだった。

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失落宴 朱鶯 @tuk1m1

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