第2話 犯罪と精神疾患—メディア報道が生む誤解
精神疾患を持つ人々が犯罪を犯しやすいというイメージは、誤解に基づく偏見の典型例です。このようなイメージを助長しているのが、センセーショナルな報道を好む一部のメディアの姿勢です。しかし、実際のデータを見てみると、こうしたステレオタイプは事実とは大きく異なります。
まず、アメリカで行われた研究によると、暴力犯罪に関与する精神疾患患者の割合は全体のわずか3%未満であることが分かっています。さらに、この数値には未治療や物質依存(アルコールや薬物)の影響が含まれており、精神疾患そのものが直接的な原因であるケースはさらに少ないとされています。ヨーロッパでも同様の結果が報告されており、犯罪率と精神疾患には有意な相関がないことが確認されています。
では、なぜ「精神疾患=危険」という偏見が生まれるのでしょうか?その一因が、事件報道で精神疾患が強調される傾向にあります。日本のメディアでは、加害者が精神疾患を抱えている場合、診断名や治療歴が頻繁に報じられることがあります。このような報道は、あたかも精神疾患が犯罪の主な要因であるかのような印象を視聴者に与えます。
対照的に、イギリスやスウェーデンなどの国では、事件報道において精神疾患の情報を過度に強調しないガイドラインが整備されています。例えば、イギリスの「Time to Change」キャンペーンでは、メディアに対して「精神疾患を持つ人を犯罪と結びつける表現を避ける」ことを推奨しています。この取り組みの結果、精神疾患に対する偏見が緩和され、当事者が治療や支援を受けやすい環境が整いつつあります。
また、統合失調症やパーソナリティ障害を持つ人々が、犯罪の被害者になる可能性が高いこともデータで明らかにされています。アメリカ精神医学会(APA)の報告では、精神疾患を抱える人々が暴力や詐欺などの被害に遭うリスクは、一般の人々と比べて約3倍高いとされています。社会から孤立し、周囲のサポートが不足していることが、被害を受けやすい背景として指摘されています。
このような現実を踏まえると、メディアが精神疾患を犯罪と結びつけて報道することがいかに偏見を助長しているかが分かります。そして、誤ったイメージが広まることで、精神疾患を持つ当事者が社会参加や支援を受けることを難しくする悪循環が生じています。
偏見を減らすためには、報道のあり方を見直すことが不可欠です。センセーショナルな報道ではなく、専門家による冷静な分析や、当事者の声を取り上げる姿勢が求められます。また、視聴者としても、メディアが提供する情報を鵜呑みにせず、客観的な視点で情報を受け取る努力が必要です。
次回は、海外のメディアガイドラインや成功事例を参考に、どのように偏見を緩和できるのかを具体的に探ります。誤解や偏見を超えるためのヒントを見つけていきましょう。
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