データが語る真実：精神疾患への偏見を問う

星咲紗和（ほしざきさわ）

精神疾患や障害に対する偏見は、どの国でも社会的課題として存在しています。特に、日本では「精神疾患を公にするのは恥ずかしい」と考える風潮が根強く、当事者が孤立しやすい状況が続いています。こうした偏見は、しばしば誤解や無知に基づいており、実際のデータが示す現実とは大きな隔たりがあります。

世界保健機関（WHO）の調査によると、全世界の人口の約1割が何らかの精神疾患を経験しているとされています。それにもかかわらず、精神疾患に対する偏見は社会の中で根強く、これが治療の遅れや社会参加の妨げになる要因となっています。たとえば、アメリカの研究では、統合失調症患者の約60%が「自分が精神疾患を持つことを隠すことで偏見を避けている」と答えています。日本でも同様に、多くの当事者が他者の目を恐れ、治療や支援を受けることをためらっています。

一方で、偏見が生まれる背景には、精神疾患に対する正しい情報が不足していることが挙げられます。イギリスで行われた世論調査では、「精神疾患を持つ人は危険だ」と考える人の割合が約30%にのぼりましたが、啓発キャンペーン「Time to Change」の導入後、偏見が大幅に減少したという成果が報告されています。これは、正しい知識が広がれば、偏見が緩和される可能性を示しています。

一方、日本では精神疾患に対する情報が限定的で、学校や職場で学ぶ機会もほとんどありません。そのため、誤解が更新されないまま社会に広がり、偏見が固定化されている状況があります。特に、メディアの影響が強い日本では、事件報道などで精神疾患を過度に結び付ける表現が偏見を助長する原因の一つとなっています。

偏見を減らすためには、まず私たち一人ひとりが**「精神疾患は特別なものではない」**と理解することが重要です。精神疾患は、身体疾患と同じように、誰もが抱える可能性のあるものです。また、適切な治療や支援を受けることで、多くの人が普通の生活を取り戻すことができます。

データが示す通り、偏見の解消には情報の共有と社会の理解が欠かせません。このエッセイを通じて、精神疾患に対する偏見がどのように生まれ、どのように克服できるのかを考えていきたいと思います。次回は、メディア報道が偏見に与える影響とその実態について掘り下げます。