第三章 消えたメロディ

 ある曇り空の午後、桜ノ宮女子高等学校の静かな音楽室から、突然ピアノの音が響き始めました。校内はほとんどの生徒が授業で忙しく、音楽室には誰も入っていないはずでした。


「あれ、誰かピアノ弾いてる?」放課後、廊下を歩いていた宏美が、不意に立ち止まり耳を澄ませました。


「え、でも音楽室には誰もいないよね?」優子も立ち止まり、首をかしげながら宏美と一緒に音楽室のドアに近づいていきました。二人がそっとドアを開けると、部屋には誰もおらず、自動演奏されているかのようにピアノが鳴っていました。


「これって、自動演奏機能が壊れてるのかな?」優子がピアノの前に近づき、そのメカニズムを調べ始めました。しかし、彼女が検討を加えるうちに、ピアノの音は突如として止まりました。


「おかしいね、ちょうどいいタイミングで止まるなんて。」宏美が戸惑いを隠せないでいました。


「そうね…。しかも、これが演奏していたメロディ、どこかで聞いたことがあるような…」優子は思い出そうと眉をひそめました。


「あ、これってもしかして…!」宏美が突然目を輝かせて言いました。「これ、前に音楽の先生が『禁じられたラブソング』って言ってた曲じゃない?」


「えっ、本当に? なんでその曲が?」優子が驚きの表情で宏美を見ました。


「うん、昔この学校で問題になった恋愛事件があって、その時のカップルが好んでいた曲だって。だから、先生方がこの曲の演奏を禁止したんだって。」


 優子は深く考え込みました。「それがなぜ自動で演奏されるのかしら…。しかも、私たちが来た時にだけ?」


「もしかして、何かのメッセージなのかもしれないね。」宏美が提案しました。「誰かが私たちにこの曲を聞かせたい理由があるのかも。」


 二人はさらに調査を進めることに決め、学校の過去のアーカイブを調べたり、音楽教師に話を聞いたりすることにしました。この謎のメロディが隠している秘密を解き明かすために、彼女たちは学校の歴史にさらに深く潜り込んでいくことになるのでした。

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