第16話 リリーシェ騙される
しばらくすると男がふたり現れた。
「あんたリリーシェさんかい?」
リリーシェは知らない人で戸惑った。
「あなたたちは?」そう聞いてくれたのはユーリだった。
「なんだお前は?」
「彼女の連れだ。それで何の用だ?」
「じゃあ、あんたがリリーシェさんって事か?」
リリーシェは仕方なくうなずく。
「アンナさんから頼まれたんだ。急用が出来て場所を変えたいって」
「あっ、そうだったんですか。すみません。それで場所は?」
リリーシェはアンナの名前が出てほっとする。
「案内する。ついて来てくれ」
「わかりました」
リリーシェは男たちについて行こうとしたがユーリに腕を掴まれた。
「どういうことだ?診療所に来たんじゃないのか?」
「いえ、実は旅の途中で仲良くなった女の人にお金を貸してほしいと泣き疲れて…でも、おかしいですね。ここに娘さんの旦那さんが怪我をして治療を受けているって聞いたんですけど」
リリーシェは約束したがユーリに入っても問題はないと思った。
それに男達の事を疑う素振りもなく不思議そうに話す。
「リリーシェ。その人は信用できるのか?」
ユーリは腕組みをしてリリーシェを見下ろしている。その瞳は鋭くキラリと何かが光ってるようにも見える。
「ユーリ様ひどいです。アンナさんはすごくいい人なんです。信用できるに決まってます!」
リリーシェは胸を突き出すようにして文句を言う。
「そこまで言うなら…でも、俺も一緒に行くからな。どうも何かおかしい気がする」
ユーリは男たちに聞こえない用リリーシェの耳元でそう囁いた。
「おい、いつまで待たせる気だよ。向こうも待ってるんだ。お嬢さんよ。急いでくれないか?」
「はい、行きます。案内して下さい」
リリーシェは苛つくふたりに案内を頼む。
男のひとりが先に立って歩き始めた。もうひとりはユーリの後ろをついて来る。
行き先は街の明かりがない通りに向かっていてリリーシェは心細くなって行くがユーリがすぐ後ろをついて来てくれているので何とか男の後をついて行った。
思った通り暗がりの道に入るとその奥まった道の先に小さな家が見えた。
「あそこだ」
「あれがアンナさんの家ですか?」
やけに辺鄙な場所だと思うがそれは失礼かとも思い直して家を目指す。
「お~い。アンナ。リリーシェさんを連れて来たぞ」
男が家の外から声をかけるとばたばた音がしてアンナさんが出て来た。ちらりとユーリを見た気がした。
「リリーシェさん…こんな所まで申し分かりませんね。出掛けようとしたら娘の具合が悪くなってねぇ」
「いいんですよ。それより娘さんのお加減は?」
「ええ、まあこんな所じゃ…とにかく中に入って下さい」
「ええ、お邪魔します」
リリーシェはほっとしてアンナさんについて行く。
「おっと、あんたはここで待っててくれ」
後ろをついて行こうとしたユーリを男が塞ぐ。
「そういうわけにはいかない。俺はリリーシェさんのそばを離れるわけにはいかないんだ」
リリーシェは後ろでもめていることに気づいてユーリに声をかける。
「大丈夫ですよユーリ様。すぐに用を済ませますから待っててください」
「いや、待てリリーシェ。どうも様子が変だ。何かあるかも知れない」
「そんなことあるはずないですよ。アンナさんはいい人ですし困ってるんですから。いいからそこで待っててください」
リリーシェはリオンの婚約者だったころの事を思い出す。そうそう前はいつも何かあったらとか危険ですとかって周りの人たちがうるさかったわよね。
でも、もうそんな事も気にしなくて良くなったのよ。
リリーシェはすっかり油断してアンナの後に続いて家の中に入った。
ぴしゃりと扉を閉める音にビクッとして中を見る。
「ひとりで来ると言ったのに嘘をついたんですね」
いきなりアンナさんの顔つきが変わったと思ったら部屋の中から男が数人飛び出して来た。
リリーシェはあっという間に取り囲まれるとひとりの男に腕を掴まれ動けなくされた。
「あ、アンナさん?これはどういう事?」
「あんたには死んでもらうんだよ」
アンナさんはまるで別人にでもなったように冷たい声で言う。
「アンナさん?あなた騙したの?」
「今頃気づいたのかい?おめでたいね。私が偶然あんたと出会ったとでも思ったのかい?ピュアリータ国を出るときからあんたをつけていたんだ」
「どうして?もしかしてリオン殿下が?ううん、神殿長が?」
「誰でもいいだろう。あんたは死ぬんだから」
アンナがリリーシェの顎をぐっと上げさせてぐっと顔を近づける。
「いや!やめて!」
「おいアンナ、いい加減にしろ」
男が止めに入った。
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