第13話

 ガリタ食堂を出て、私が港街に着いたのはちょうどお昼ごろ。港街の商店街は港でとれた、新鮮なお魚をもとめたて、人々で混雑をしていた。


(すごい人だわ)


 私も人混みに混ざりお店を覗く。お目当ての魚を使ったハンバーガー店は混雑していて一時間待ち、串焼きの店も一時間……あきらめて、また来たときにしようと他の店を探した。


(新鮮な甘いエビが乗った、豪華な海鮮丼は少し値段が高いかな?)


 きたばかりのとき、公爵家から出るときにマジックバッグに入れて持ってきた絵画、宝石を売ろうとしたけど。絵画、宝石は王都にいる専門の鑑定士にしか売却できず、ドレスもドレス専門店でしか扱ってもらえない。


 その話を知って、ガッカリしたけど……贅沢しなければ、カリダ食堂のお給料でやっていける。



 

 お昼をもとめて、港街の街中を歩いていた。

 

(うわぁ、魚の焼ける香ばしい香りする〜)


 焼きたての魚の匂いにつられて、出店の前で足が止まる。このお店は少し前、港街にオープンした新鮮な魚を扱う定食屋。今日はガリタ食堂が定休日だからか混雑していた。


 ――ここも無理だわ。


 こうなったら出店で買って、公園のベンチで食べようと決めて、店の前で出店を開くおじさんに声をかけた。


「おじさん、小海老の丸焼き串とアジフライ二枚、あと大根おろしください」


「小海老とアジフライだね。お嬢さん、ソースと醤油どっちにする?」

 

「醤油でお願いします!」


 港街の中央にある、公園のベンチに座り焼きたての小海老の丸焼きを頬張った。


「んん〜。小海老、美味しい」


 よく焼かれているから、殻までサクサク食べられる。

 揚げたて熱々のアジフライに大根おろしを乗せて、醤油をかけてかぶりついた。


(アジフライが肉厚で美味しい〜)

 

 公園のベンチで、アジフライを頬張る私の足元に小さな影が駆け寄り「ワン、ワン」と鳴いた。


(え、犬?)


 聞こえてきた鳴き声に下を覗くと、私の足元に黒い毛のモコモコ、もふもふ、琥珀色の瞳の子犬が尻尾を振っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る