第12話
今日、ガリタ食堂の定休の日はお寝坊の日だと決めている。そのことをお友達の福ちゃんは知っている……はず。
だけど早朝。コツ、コツコツ……コツコツ、コツコツ、コツコツ……いますぐ起きろと言わんばかりに、窓枠を突っつく音が部屋に響く。
(福ちゃん? もう、今日はお休みなのに……。少しでも、お寝坊すると激しいなぁ……)
「ホー、ホー!!」
私が起きていることがわかったのか「コツコツ、コツコツ、コツコツ」と乱暴に窓枠を突っつくから、窓枠がガタガタ揺れはじめる。
「待って福ちゃん。起きてる、起きてるから!」
ベッドから飛び起きて海側の窓を開けたのだけど、福ちゃんはお寝坊を怒っているのか、窓を開けると目の前でいきなり羽をバサバサ広げた。
「あ、あはは……ごめん、いつもよりお寝坊だったね」
と言えば。そうだと言わんばかりに福ちゃんは、体全体を使いコクコク頷いた。なんとも、私のお友達は起きる時間に手厳しい。
「ホ、ホーホー」
「わかってる。おはよう福ちゃん」
「ホー」
「え、もう帰るの?」
福ちゃんは満足したのか、羽を広げ飛んでいってしまう。
「福ちゃん、また明日ね!」
「また明日」と大きく羽根を羽ばたき伝えてくれる、その福ちゃんを見送る私のお腹がグウッと鳴った。本日も、私のお腹は元気だ。
――はぁ、お腹すいた。港街の商店街でハンバーガー? それとも焼き鳥、海鮮丼……すぐにでも街に行きたいけど。いく前に、たまった洗濯物を終わせなくちゃ。
私は洗濯物をカゴにつめて、ガリタ食堂の裏の奥にある井戸で冷たい井戸水をくみ、洗濯物を洗濯用の石鹸で洗う。異世界での洗濯物は大変だけど、魔法屋さんから貰った洗濯石鹸の試作品のラベンダー石鹸は香りもよく、汚れも落ちがいい。
「これで、洗濯物は終わり!」
洗いたての洗濯物を軽く絞り、物干し紐に干した。
風になびく洗濯物たち、いま私に魔法が使えたら風魔法でかっこよく乾かせるのに。空っぽになったカゴを拾い、洗濯物をながめた。
(今日は天気がいいだから、港街へ出かけている間に乾きそうね)
木製の階段を駆け上がり、二階の自分の部屋へと戻る。
部屋で昨夜に準備したワンピースに着替えて、長い髪をポニーテールにして先輩から貰った髪飾りを付け、革製の手提げカバンを持ち「たくさん食べるぞ!」と港街へウキウキくりだした。
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