第11話
今日、先輩が話してくれた話は、海沿いの洞窟に住み勝手に住みつき、人々に悪さをする黒いドラゴンの退治の話。
『シエル先輩、その黒いドラゴンはどうなったのですか?』
『勿論、この俺様が、魔法でドラゴンを倒した』
『えぇ! うそ、シエル先輩がドラゴンを一人で倒したの? 凄いわ、さすが学園一の魔法使いね』
『学園一の魔法使い? 俺そんな通り名で呼ばれてるのか? 嫌だな……だが、ここには俺より魔法量、強い魔法使いはいないからな』
『先輩より、すごい魔法使いはいないわ』
ほんらいなら婚約者のいる身で、公爵令嬢の私が、男性と書庫に二人きりでいることも。ましてやルー、シエル先輩と、呼んだり呼ばれるなんて許されない。
(もし、殿下と彼らに見つかったら? と思ったのだけど。それよりも、シエル先輩に会いたくて第三書庫に通い続けた。いま思えばよく殿下と彼ら、他の学生にも見つからなかったな)
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優しく、大好きな一つ上のシエル先輩。……だから、先輩の卒業式は涙が止まらなかった。数日前、彼らに詰め寄られ階段から突き落とされた私に。この日から、一年は怪我をしない、守りの魔法を先輩は掛けてくれた。
『出来るなら、奴らの息の根を仕留めたいが……ルーがダメだというから、ルーに守りの魔法をかけた。一年間の間は何があっても、守りの光がルーを守ってくれるだろう』
『ありがとう……シエル先輩、う……ううっ、離れたくないよぉ』
『お、俺だって……いや、泣くな。ルーも知っているだろう、俺は王城の見習い魔導士になったんだ。ルーも王妃教育で城に来るんだ、いつでも会えるよ』
『いつでも会えるけど、それでもシエル先輩と離れたくない……これは、私のわがままだってわかっている。迷惑をかけてごめんなさい……シエル先輩』
『迷惑じゃない。俺だって、ルーのそばにいてやりたい。あ、そうだ、ルーにプレゼントを用意してきた』
先輩から渡されたのは綺麗な細工がされた、赤い石がついた髪飾りと革製のカバン、ワンピースだった。
『こんなにたくさん……私に?』
『あぁ来年、ルーに誕生日プレゼントをあげられないかもしれないから、どれも普段使いでいい使ってくれ』
『……嬉しいありがとう。大切に使うね』
この日は泣き止むまで、シエル先輩は側にいてくれた。
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