第10話
別の日、運悪く第三書庫に向かう途中うん悪く、私はカロール殿下と対象者達と出会い彼らにに囲まれた。何事かと、他の生徒たちは遠目にこの様子を見ている。
彼らが何を言い出すのか話を静かに聞いていると。
昨日のお昼休憩のときに、私が廊下でリリーナさんの足を引っ掛けて転ばせたと、いきなり怒りに狂う宰相の息子に突き飛ばさた。
『きゃっ! いっ、……な、なにをなさるのですか?』
――くっ、いま突き飛ばされて足首を捻ったかも。
足の痛みに顔を歪ませると、宰相の息子はフンと鼻を鳴らし。
『自業自得。いま貴方がしたことが、貴方に返ってきただけです』
さも、自分がいいことをしたかのように話す。
いくら彼らに「私はリリーナさんに何もしていない」と伝えても話など聞く耳を持たず、一方的に詰め寄ってくる。
(……怖い。なにか言ったら倍になって返ってくる)
痛む足を庇いながら何も言わず、彼らの罵りを聞いていた。しばらくして、私を罵り満足したのかカロール殿下かが最後に。
『ルーチェ嬢、今度リリーナに何かしたらわかっているな!』
脅しのようなことを言い残し、彼らは去っていった。
ようやく終わったと、ため息をひとつついて痛む足を引きずり第三書庫に向かった。書庫に着き扉を開けていつもの様に、窓際の席で昼寝しているか本を読む先輩に「今日も来ました」と、声をかけた。先輩は私が令嬢らしく話さなくても気にせず「よっ」と短い挨拶をしてくれる。
だけど今日は私の方へツカツカと歩いてきて、近くの椅子に座らせた。
『シ、シエル先輩?』
『いま、足首を怪我しているだろう?』
『え? なんで分かったの?』
先輩は前にかがみ、椅子に座る私の足首を触った。
『いたっ、やめて……恥ずかしいから触らないで』
『バカ! 治療するだけだ、恥ずかしがるな』
『ち、治療?』
シエル先輩の手から光が溢れて、私の足首を温かな光りが包み込んだ。その光のおかげなのか、私の痛めた足首の痛みが徐々に引いていく。
『うそ、足首の痛みが消えたわ? シエル先輩いまの魔法?』
『あぁ回復魔法だ。よし、これで痛みはなくなっただろう? ……光栄に思えよ』
『ほんとうだわ、あんなに痛かったのに痛みがひいたわ。ありがとう先輩……』
先輩の優しさに胸が熱くなって、涙腺がゆるむ。
ポタポタと落ちる私の涙を見て「ちょっ泣くなよ。まだ痛むのか?」焦る先輩に私は違うと首を横に振った。
『ううん、足首はもう傷まないよ。あまりにも……シエル先輩の魔法が綺麗で感動したの。先輩の魔法は綺麗で凄いわ』
『俺の魔法が綺麗?……そうか、ルーはかわ……いや、魔法がほんと好きだな』
『はい、大好きです』
『……おっ、そうか』
何日かして先輩は私のことを「ルーチェは言いにくい、ルーでいいな」と呼びはじめた。そして第三書庫に行くと、面白い魔法の話をたくさん聞かせてくれた。
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