第17話 開戦 東の国

 さあ戦がはじまる。


 第一部隊の俺とサブは東のアルテミス、第二部隊は南のシレーヌ、第三部隊は北のマシュウにあたる。


 サブの肩に留まり世の中を見渡すと、本当に強くなったような気分になる。


「皆よ、一旦ここでそれぞれの方面へと別れる、この場所を覚えておけよ、終わればここに集合だからな」


「お〜〜〜〜〜う!」


「では皆んな頑張ってくれ、行け〜」


 サブと俺は東に進路をとって行く。


 東のアルテミス、魔王の中で俺を除いたとしたら、このアルテミスが一番強いだろう。


 しかし俺の方が強いだろうと思う。


 あの時の俺はまだ魔法を知らなかったが、それでもどの魔王より俺は強かった。


 このアルテミスも、確か一回シメているからな。


 東の国へと入って行く、人気のない所だなあ。


 戦争が始まるから人払いをしているのだろうか?


 淋しい丘を越えるとまた向こうの方に丘がある、全くさっきから丘ばかり歩いている。


 何かが空から降ってきた、槍のような物だ。


 サブも気付いて慌てて避けたが、避けてなければ危なかった……槍が一本綺麗な飾りも素晴らしい。


 我がロンギニスの槍を避けたのか?


「流石だなチャムよ」


「アルテミスか、もう少しで当たる所だったぞ」


「私の渾身の一撃でくたばってくれたら良かったのに」


「久しぶりじゃないか、アルテミスよ」


「私の槍を返してもらうよ」


「良いの持ってんじゃないか、サブ取り上げろ」


「分かったっス」


 サブが槍を取り上げた。


「なんだこのゴーレム、槍を返しなさい」


「アルテミス、お前は槍がないと何も出来んのか?」


「うるさい、ええい、槍をコッチにかえしやがれ」


 ことの他、サブの方が動きが早く、まるで子猫と遊んでいるみたいだ。


「そのままの位置を動くなよサブ」


 サブに声をかけて、俺はアルテミスに稲妻をぶつけてやった。


 バチ〜ン ゴゴゴゴゴゴ〜ン!


 ぎゃああああっ


 ケムリが立ち上がる中、真っ黒コゲになったアルテミスが倒れて居る。


「直撃が当たったのは初めて見た、凄まじいな」


「死んだっスか?」


「直撃だからな」


 サブがアルテミスの足であろう部分を持って上へ挙げて見ると、アルテミスはピクピクして居る。 


 まだかろうじて生きて居るみたいだが、このままでは時間の問題だろう。


「どうする?」


 今ならまだ持ってきて居る復活薬をかければ、蘇るかも知れない。


「かけましょうか、薬」


「せっかく殺せるのだがな、俺たちに攻撃してきたって事は、降伏する意思はないって事だろう」


「そうっスね、このままにしときましょう」


「そうだな、行くぞサブ、槍はもらって置けよ」


「槍ゲットっス」


 アルテミスをそのままそこら辺に捨てた。


「あっけなかったな、どうする? 時間余ったぞ」


「ちょっとこの東の国を探索するっスよ」


「そうだな観光でもしようぜ、俺たちの国になるんだからな」


「あの丘を越えたら街だぜ、きっと」


 サブの肩に留まると街を見て見る。


「まあまあだな」


「そうっスね、まあまあスッね〜」


 どうするか考えて居た、街の中にあるあの宮殿が魔王の住まう場所だろう。


 あそこの宮殿を占拠すればこの国の攻略に成るだろう、こんなに簡単に手に入るとは思っても見なかった。


「アニキ、あそこ誰か居るっス」


「聞いて見るか、すいません」


「なんじゃね?」


「この国に来てから余り人に会わなくて……この国の者で間違いないよ」


「この国を征服しに来ました、でも誰も居なくて……誰か我々と戦う勢力は居ないのかな?」


「そんな者は居ない、しかし魔王が居る」


「魔王はさっきそこで倒して来ました」


「ほう、じゃあこの国はあんたらのもんじゃ」


「それをこの国の皆に知らせる方法はありますか?」


「それはあの宮殿を占拠してしまえば良かろう」


「誰か居ますか?あの宮殿の中」


「それは分からん入ったことないから、何人かは居るみたいじゃが」


「この国に軍とか兵とかは居ないのですか?」


「そんなもの居らんよ」


「魔王1人が収めていた国なのか……」


「そうじゃ、この国は魔王と何人かの家来が収めて居る国なのじゃ」


 なんとこの国はそうらしい、警察だってあるかどうかわからない、知識がない。


 とりあえず、魔王の宮殿を占拠することにしよう。


 中には、その家来たちが居るみたいだが、それはいくら何でも、魔王自身が戦いに出て居るのに、その家来が家に居たら可笑しいでしょ。


「サブ、宮殿の扉を開けてくれ、鍵が掛かってたらブチ壊して良いからな」


 ドカ〜ン、サブがドアをぶち破ったのだ。


 開いたドアから中を覗くと、魔王の家来達がディナーを取っていたのだろう、ビックリしていた。


 本当に中に居た……それに飯食ってやがる。


「お前ら動くなよ、独りづつコッチに来い」


 家来たちは大人しく従った、その中の独りに質問をする事にした、後の者は主語厳禁だ。


「お前、そうだお前だけ声を出す許可を与える、後の者は一切声を出す事は禁止だ」


 全部で8人、魔王を入れても10人を切る人数だ。


「今から質問をする、質問のみ答えろ、人数はこれで全員か?」


「はい、八名です」


「お前たちの上は誰だ、そいつはどこでなにをしているのだ」


「私たちの上は魔王です、その魔王は今戦争に行っています」


「今からこの屋敷は俺たちが占拠した、勝手に動く事は許さん」


「わかりました」


「魔王はなぜ独りで戦争にいったのだ、お前たちはこの国をどうやって運営してきたのだ」


「魔王が1人で行くから付いて来るなと言いました」


「魔王は俺が倒した、今頃は死んでいるだろう」


 皆がざわめき始めたので、独りを小さな稲妻で撃ち殺した、ピタリとやんだ。


「動くなと言ったはずだ、命令に従わないと殺す、俺も魔王だ、今は戦争中だ」


「この国はどうやって回してるのだ、方法とかあるのかな?」


「方法はみかじめです、毎月10日に全員で回収にあたいます」


「今から2人だけ、このゴーレムに付いていけ、お前達のお館を連れて帰って来い、死体だがな」


 サブが案内人として、二名を連れて行った。


 残った者たちに、今の現状の説明と立場の説明をしてやった。


「俺は西の魔王でチャムと言う、いま俺は全世界に戦線布告をして戦争をしている、まずはこの東にやって来て東の魔王は排除した。 お前たちはまず捕虜になる、そして西の収容所に入り時が立つのを待つか、新たに西の戦士として再出発するかの二つ選ぶ権利を与える、良く考えて答えをだせ。 最後にもし西の戦士を希望するなら、私への忠誠が必要になる、以上」


 サブたちが戻って来た、魔王アルテミスの死体を持って帰ってるので、家来たちに宮殿の中にはに穴を掘らせて、葬らさせた。


 次の日から東の国全体の統治活動を始めた。


 アルテミスの家来たち全員七名 (独り殺した) が西の戦士になりたいと言うので忠誠を誓わせた。


 選挙の時に使う宣伝カーを用意して、国民に知らせる事にした。


 それとテレビ放送局も占拠して、中継を使って放送を流したりした。


 十日もせずに、この東の国、一国を占拠する事に成功した。


 とりあえず西から応援を呼んで東を西の属国扱いにして、大規模統治に舵を切っていく。


 この東国が本当に一つの国として歩き始めるには、まだ少し時間が掛かるだろう。

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悪逆非道の限りを尽くした俺が転生したら、可愛い妖精に成って居た…… 道筋 茨 @udon490yen

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