第三章:秋の魔女との対峙
四季宮での説明を終えたルミナは、自分の部屋に案内された。豪華な調度品に囲まれながらも、彼女の心は不安で一杯だった。窓から見える四季国の美しい景色さえ、その気持ちを和らげることはできない。
突然、ノックの音が響いた。
「入ってください」ルミナが声をかけると、ドアが開き、一人の女性が現れた。
深い赤褐色の巻き毛、琥珀色の瞳。秋の色彩を纏ったドレスが、彼女の気品ある雰囲気を引き立てている。
「初めまして、ルミナさん。私はセリア。秋の魔法使いよ」
その声には温かみがあったが、目には鋭い光が宿っていた。
「あ、はい。よろしくお願いします」ルミナは慌てて挨拶を返した。
セリアはルミナの周りをゆっくりと歩き、彼女を観察した。
「あなたが春の花冠の担い手...正直、期待はずれね」
その言葉に、ルミナは思わず身を縮めた。しかし、次の瞬間、彼女の中で何かが燃え上がった。
「私だって、自分がなぜ選ばれたのか分かりません。でも、この国を守るために全力を尽くすつもりです!」
ルミナの言葉に、セリアは一瞬驚いたような表情を見せた。しかし、すぐに冷ややかな笑みに戻った。
「言葉は簡単よ。でも、本当にあなたにそれだけの力があるの?」
セリアが手を上げると、部屋の中に風が巻き起こった。紅葉のような色とりどりの葉が舞い、ルミナの周りを取り囲む。
「さあ、あなたの力を見せてみなさい」
ルミナは焦った。まだ春の魔法の使い方も分からない。でも、ここで引き下がるわけにはいかない。彼女は目を閉じ、心の中で祈った。
「お願い...私に力を...」
すると、胸元の花冠が淡く光り始めた。ルミナの周りに、春の風が吹き始める。舞っていた紅葉が、次第に新緑の葉に変わっていく。
セリアは目を見開いた。「まさか...本当に春の力を...」
しかし、その瞬間、魔法の衝突が起こった。二人は反動で倒れ込み、部屋中が花びらと葉で覆われた。
「何をしている!」
厳しい声と共に、シリウスが部屋に飛び込んできた。彼の周りには冷気が漂っている。
「セリア、新参者を試すのはいい。だが、ここは四季宮だぞ。もっと分別を持て」
セリアは顔を赤らめ、すぐに姿勢を正した。「申し訳ありません、シリウス様」
シリウスはため息をつき、ルミナを見た。その目には、わずかながら驚きの色が浮かんでいた。
「お前...予想以上だな。だが、まだまだだ。明日から、私が直々に指導してやろう」
ルミナは驚いて顔を上げた。シリウスの表情は相変わらず厳しいが、どこか期待のようなものを感じた。
部屋を後にするシリウスとセリアを見送りながら、ルミナは決意を新たにした。これが自分の新しい世界。ここで、自分の力を見つけ、この国を守る。そう、きっと...
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