あたおか

考えたい

第1話 いざ給え、湯浴みへ!

 とある平日の夜、都内某所に住むとある夫婦が晩飯を食べながら団欒を楽しんでいた。

 その最中、ふと嫁ちゃんが突拍子の無いことを言い出した。



「あぁ、ソープ行きてぇ。」



 旦那はゆっくり顔を上げ、そして口に含んだ茶を嫁ちゃんの顔面に目掛けておもっくそ噴き出した。

「汚いねぇオイ。」

 嫁ちゃんは顔を袖で拭いながら悪態をつく。

「汚いもクソも、まさか嫁ちゃんの口からそんなワードが出てくるとは夢にも思わないよ。」

「それもそうか。」

 そう言いながらゲラゲラと笑い、缶チューハイを片手でぶらつかせる。

 少し酔いが回っているのか、顔がほんのりと紅い。

「で、その心は?」

「大きな胸をモミモミしたい。」

「なるへそ。」

 動機もやっぱり嫁ちゃんだ。

「大きければ大きいほどいいんだよぉ!全く世の中にゃデカメロンぶら下げてかわいい女の子は沢っ山いるのに、何故、何故、何故、うわーん!」

 嫁ちゃんの泣き上戸が発動した。

「でも嫁ちゃんかわいい。」

「ほぼ絶壁だが、絶壁だが!わ・た・し!」

 嫁ちゃんぷんすかぷんすか。

 旦那からすれば嫁ちゃんが可愛いことこの上ない。まるでスーパーでお菓子を買ってもらえなくて駄々をこねる小学生のようである。

 そう言いながら旦那はズズーッ、と茶を啜る。何せこの後仕事が残っているので。

 そして一瞬気を鎮める為に目を閉じる。時間にして約十秒。

 そして再び目を開けると、嫁ちゃんは爆睡していた。それはもう綺麗に典型的な酔っ払いであった。

 はあ、と溜息を吐き、旦那は嫁ちゃんをおんぶして寝室のベッドに寝かせる。

 そして壁に目を向ければ、いつものことながら十八禁のタペストリーが五枚掲げられている。漏れなく全て巨乳。嫁ちゃんの趣味である。

 そして寝室を出て、旦那は鞄から大量の紙を取り出し、せっせと仕事を始めたのだった。






 して翌日、

「ソープ行くわよ!」

 バッチリ覚えてた。

「いざ行かん、歌舞伎町へ!」

 そうやって嫁ちゃんは徹夜明けの旦那を引き摺りながら街へ繰り出すのであった。

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