冬に埋もれた花の名は。

藍無

第1話 冬花

雪の降る様子を、縁側に座って、私_冬花は見ていた。そこへ、

「冬花。そんなところにいたら風邪ひいちゃうよ。」

と言って、彼は私に上着をかけてくれた。

空翠すい。」

「なんだい?」

彼のきれいな新緑色の双眼がこちらを見つめる。

彼の額に生える翡翠色ひすいいろの角は今日もきれいだ。

「雪だるま、作ろうかな。」

「今は雪が降っているし寒い。雪がやんだら作ろうか。」

「そうだね。ふふっ。」

「今は寒いから、部屋に戻ろう?」

「_、わかった。」

そう言って、二人は部屋に戻ろうと、立ち上がる。

「ごほっ、かはっ。」

「大丈夫!?」

血が、私の口から流れる。

「う、うん。大丈夫。ちょっと、せき込んじゃっただけだから。」

「う、嘘だよ。だって、血が出てる。」

「だ、大丈夫だから。」

「だめだよ。」

そう言って、空翠は私を抱えて、部屋に運び、布団の中に寝かせた。

「やっぱり寒さが良くなかったんだよ。もう明日から外に出ちゃだめだよ。」

そう言って、空翠は私の頭を撫でた。

「で、でも雪だるま作りたい。。」

「だめ、それは元気になってからね。」

そう言って、空翠は私から顔をそむけた。

「元気に、普通の体に戻れないって、知っているくせに。空翠のいじわる。。」

空翠は私がそう言っても一向にこちらを向こうとはしない。

どんな表情をしているのか、これではわからないじゃないか。

「元気に、なるよ。絶対。元通りに。」

空翠はそう呟いた。

向こうを向いたままだったが。

そう、信じているような言い方だった。

そう信じてくれていることが、少しうれしいようなきがした。

ただ、戻ることがないという事実だけが、その場にあった。

今までの、ことを考えてみよう。

横になっていて、暇だから。

立つと、魔力が枯渇してせき込んだりするし、横になっていると魔力がうまく回る代わりに何もすることがない。退屈なのだ。

だから、今まで、どんなことがあったのか、思い出してみよう。

―――――

「冬花。冬鬼様には気を付けてね。」

「うん、わかっているよ。学校、行ってくるね。」

「はい、いってらっしゃい。」

冬鬼様。

それはこの地に古くから伝わるおとぎ話。

この地には昔、悪霊や妖怪がたくさんおり、人間に悪さをしていた。

そして、人間たちはその妖怪や霊たちのするいたずらや悪行に困っていた。

そんなとき、その悪霊や妖怪をおさめてくれる強い妖怪が現れた。

それが、冬鬼様。

冬鬼様が、悪霊や妖怪たちに、どうしていままで人間に悪行を働いてきたのか、などを聞き、この地への妖怪、悪霊が悪行をもう二度としないようにしてくれたのだ。

人々は、冬鬼様を褒め称えた。

しかし、それと同時に、冬鬼様に対して人々は恐れた。

その強い妖怪の力を、自分たちに害を及ぼそうとすることには使わないか、と。

そして、人々の間で、冬鬼様は信仰し、恐れる存在になった。

これが、冬鬼様のおとぎ話。

この話が関係しているのかは知らないが、この地では、出かける人には必ず、冬鬼様には気を付けて、というのがお約束となっている。

そんなことを思い出しつつ、私は学校へ向かった。


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