誰もが知る
扶良灰衣
読み切り短編
ある豚がいて、その肉を食べてる人がいて、でもその豚を潰してるところは想像しないでいいように不自然に隠されている。毛皮のコートを着ていることがステータスがあるって感じる。実際には毛皮を剥いで食べもしない動物がいる事の現実を想像させないようなシステムとして出来上がっている事を、誰もが知っていて気付いてるいるのだけれど、そのシステムの中に当たり前のように取り込まれている自分がいる。そして自分たちが利用している動物を、殺している、皮を剥いでいる人たちを差別して、自分たちの階級よりも下の階級を、システムを築く。上の階級があるのだから 下の階級を産み出す。世界のどんな人間でも、当たり前のように存在する。システムとしてつくりあげる。それは人間で在る限り、人間として生きる限り。夢想する、そんな世界が失くなることを。誰もが知っている、誰も誰が気付いているのだが、この現実は、言っても仕方ない事だとされる、この事実は人間が作り上げたシステムなのだから、抗えない事を誰もが知っているからこそ覆い被されている、という面があって、このシステムにいいとか悪いとかではなく人間が作り上げている文明があるという事が存在しているのだから、この世界からははみ出すことが出来ないのではないかと思う。恐ろしいことに人間であるという事は、想像する事をやめられないのだ。そして想像できることを成し遂げようとする。どんな事でも。歴史とか法とか道徳とか常識とかモラルとか、人間が築いたものを一切合切、破壊して。絶滅するかもしれない、という想像があっても人間は成し遂げようとする。宿主の生存は許すのは自らの生命の為、拡大してゆくのが目的のように。真綿で首を絞めるが如く、生命の繁栄の祝宴をひらき祝杯を上げ、自らの生存のために、呻く生命を破壊して自らの生命を少しずつ維持するのだ。
この世に無限のものはなく、全て有限なのだから、希望への道だろうが破滅への道だろうが全ては人間が人間として想像する事を成し遂げようとする。人間の人間たらしめる為に。
隠している者は隠さない人を恐れるのだ。
誰もが知る 扶良灰衣 @sancheaqueous
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