第2話
勉強に疲れた信介は室内にこもりっきりだったので
見つけてみるとそこには棚一段分ほどの自然コーナーがあった。信介は昆虫図鑑を手に取った。パラパラながめてみると少し出っ張ったページが指のあたりに感じた。きっと誰かがやぶいたんだろう。そのページを見てみるとなんとも奇妙な種類の昆虫が載っていた。まるでほ乳類だ。名前を見ると”シャチクノニンゲン”という昆虫だった。信介は日ごろの自分の不健康を自覚した。これはヤバイ。さすがの信介もここまで末期だったとは思わなかった。目をこすりもう一度見てみるとやはり”シャチクノニンゲン”と書かれていた。
さらに驚いたことが起こり、信介は数か月ぶりに奇声を発した。”シャチクノニンゲン”と書かれた上にスーツ姿のサラリーマンの写真が載っていた。目元が黒く何日も寝ていないような顔だった。
「これは、、」
他のページも見てみると全部人間に変わっていた。はじめのページもかっこいいスズメバチがでかでかと写っていたのに今では頭頂の目立つオッサンに変わっていた。
少年のワクワク心を返せと思った。
図鑑から目を離してみるとまわりにはもう生徒たちはいなかった。まずい。もう1分前じゃないか。信介は急いで図鑑をもとの位置にしまいダッシュで教室に向かっていった。ちなみに自然コーナーは社会コーナーに変わっていた。教室につくと信介はそーっと扉を開けてガタンとおとがしないように指を少し扉の間に挟んで閉めた。そして最後尾の席について前を向いて号令をしようとした。すると彼の目線の先にはコオロギになった先生がいた。
「まじか!」
先生は上2本の腕が人間で下4本が昆虫だった。先生だけじゃない他のみんなも同じ感じでクワガタやカメムシ、コガネムシやカマキリなど多種多様な昆虫に姿を変えていた。先生にいたってはチャームポイントのメガネがコオロギの眼に合わせて横に伸びていた。
「山岸、号令」
コオロギの口はまるでトランスフォーマーのような動きをしていた。
「あのー、先生は何コオロギなんですか。」
号令よりまず先に疑問が出てきてしまった。
「おいおいそれ冗談だろ。同じコオロギ科だから種類ぐらいわかるだろ。」
まわりからどっと笑い声が上がった。みんなキシキシ笑うと思ったけど意外と人間の声だった。
僕がコオロギ?手を見てみた。なんの変わりはない。頭を触ってみた。つるつるでいつもより硬くなっていた。
「すみません。寝ぼけてて、、」
「大丈夫か?最近ちゃんとメシ食って寝てるか?」
いやもう昆虫がしゃべってる時点でメシとかそういうレベルの問題じゃない。国家の危機だ。信介はこの状況を飲み込むのに数週間かかった。
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