第8話 アジト
山県は誠二の死から数週間後、ようやくその悲劇を乗り越え始めていた。しかし、心の中に残った重い思いが消えることはなかった。それは、誠二が抱えていた「秘密」が何であったのか、そしてその秘密が最終的に彼を命を落とすことに繋がった原因だったのだろうか、という疑念だった。
警察は誠二の家族を調べ、父親が関与していたことがほぼ確定していたが、山県の心には納得できない部分があった。誠二の父親がなぜそのような行動に出たのか、その背後に何かもっと深い理由があるのではないかという疑念が消えなかった。
ある日、山県は劇団の稽古を終えた後、街を歩いていた。暗い夜の中でふと足を止めると、目の前に見慣れた人物が現れた。それは高瀬裕也だった。
「山県くん…少し話がしたいんだ」
高瀬の顔は、いつもよりも緊張しているように見えた。山県は無言で彼を見つめる。
「実は…誠二の家族について、もう一つ気になることがあるんだ」高瀬は言いにくそうに言葉を続けた。「誠二の父親、実は単独で動いていたわけじゃない」
「どういうこと?」山県は息を呑んだ。
高瀬は少し黙った後、続けた。「誠二の父親には、もう一人関わっている人物がいる。彼の名前は『高坂』。誠二が命を落としたその日に、彼も学校の近くにいたらしい」
「高坂?」山県はその名前に覚えがあった。高坂という名前は、学園内では一度も聞いたことがないが、何か引っかかるものがあった。
「高坂は、誠二の父親の古い友人で、裏社会と繋がりがあるって噂されている人物なんだ」高瀬が続けて言う。「誠二が死ぬ前に、父親と一緒に会っていた可能性がある。もしかしたら、誠二が暴露しようとしていた何か、もっと大きな秘密に関係しているかもしれない」
山県はその言葉に耳を傾けながら、心の中で何かが引っかかるのを感じていた。誠二の死が、単なる家庭内の問題では終わらないような気がしていた。
「高坂…その人物がどこにいるのか、知ってる?」 山県は強い口調で尋ねた。
「わからない。でも、もし本当に関わっているなら、彼のアジトがどこかにあるはずだ」高瀬の表情が険しくなった。「誠二が命を落とす直前、彼が言おうとしていたことが、まさにそのアジトに関係しているのかもしれない」
山県は深く息を吐き、決意を固めた。「このままじゃ、誠二の死が無駄になってしまう。俺は、真実を明らかにする」
山県と高瀬は、誠二の死の真相を追い求め、再び調査を始めた。高坂が関わるとされる「アジト」の手がかりを探ることに決めたのだ。
調べを進めるうちに、二人は驚くべき事実にたどり着く。高坂が経営する「高坂商会」という小さな商店が、実は表向きの顔に過ぎなかった。商店の裏には、大規模な密輸ネットワークが隠されており、誠二がその秘密を知っていた可能性が高いというのだ。
「高坂商会の倉庫の一部が、実はアジトだったらしい」高瀬が教えてくれた。「ここから、薬品や貴重品が密かに流通していたという話がある」
二人は、その倉庫の場所を突き止め、夜間に忍び込む計画を立てた。倉庫は街の外れにあり、周囲はほとんど人通りがない。山県と高瀬は、無事にその場所に到達し、周囲を慎重に確認した。
倉庫の扉には、古びた鍵がかかっており、無理に開けるわけにもいかない。しかし、二人はあらかじめ手に入れていた情報を頼りに、隠し扉を見つけ出した。
中に入ると、倉庫内は薄暗く、積み上げられた箱や袋が並んでいた。山県は慎重にその中身を確かめると、突然、見覚えのある写真を見つける。それは、誠二とその父親、高坂が写った写真だった。
その瞬間、背後から足音が聞こえた。振り返ると、暗闇の中に二人の影が立っていた。
このクソみたいな世界🗺️ カクヨムコン10万字 5万字まで善人。以後悪人編。悪行=魔法 鷹山トシキ @1982
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