第4話 さらなる悲劇

 栃木県ひまわり町の劇団「ひまわり座」が新たに立ち上がり、希望を胸に再出発を果たそうとしていたその矢先、予期せぬ事件が舞い込む。新たに結成された劇団の中で、再生を果たそうとしていた真琴は、自分の未来に少しずつ光を見いだしつつあった。しかし、その平穏は長くは続かなかった。


 ある晩、劇団のスタッフが集まり、次回公演の準備をしていた最中に、吉田真治(劇団長)の姿が忽然と姿を現す。彼はひまわり座の元劇団長として、劇団の再生を妨害しようと画策していた。真琴や田村慎一(ベテラン俳優)が中心となって築いた新しい道を、完全に壊すために現れたのだ。


 吉田は、ひまわり座の再建のための公演が決定したその夜、劇団の内部に潜んでいた。彼は劇団の練習を妨害し、意図的に対立を煽り、ひまわり座の足を引っ張ろうとする。彼の影響を受けた劇団員たちは次第に不安を抱き、真琴たちに対して反感を抱くようになっていった。


 その晩、吉田は突如として暴力的な言葉で劇団員たちに接し、「お前たちが何をやろうと、俺の作り上げた劇団はお前たちには無理だ」と大声で叫ぶ。しかし、その時、真琴が前に出て言った。「あなたのやり方はもう通用しません。私たちはこれから、自分たちの力で進んでいくんです」と。


 その言葉に激怒した吉田は、真琴に向かって暴力を振るう寸前で、劇団の他のメンバーが彼を取り押さえ、なんとか事態は収拾される。だが、その暴力的な振る舞いが劇団内で再び吉田に対する恐怖を呼び覚まし、ひまわり座の再生は暗雲に包まれてしまう。


 その数日後、劇団の前途に一層の影を落とす事件が発生する。田村慎一(ベテラン俳優)が劇団員たちとの練習後に姿を消した。劇団の面々が彼を捜索するが、数日後、田村の遺体がひまわり町の近くの山中で発見された。彼の死因は不明であったが、その遺体の発見場所は、まるで誰かに追い詰められたような形跡を残していた。


 劇団は衝撃を受け、田村の死について深い疑念を抱くようになる。真琴は、田村が吉田によるさらなる圧力に耐えられず、自ら命を絶ったのではないかと疑いを抱く。しかし、警察の調査結果では、自殺とは考えにくいとされ、誰かが関与している可能性があることが示唆される。だが、証拠はまったくなく、捜査は進展を見せなかった。


 田村の死後、劇団はさらに分裂していく。吉田の影響力を受けていた一部の劇団員たちは、真琴たちとの対立を深め、さらに悪化した空気が支配するようになる。


 真琴は、田村の死が吉田に関連していることを確信し、ついに劇団内で吉田に直接対決を挑む決意を固める。だが、その矢先、劇団の事務所に届いた一通の手紙が、事態を一層深刻にしてしまう。


 手紙には、こんな内容が書かれていた。

「田村慎一の死は始まりに過ぎない。お前たちは僕に挑んだ。それに対する代償を払う覚悟があるのか? 次はお前だ、真琴。」


 手紙には、奇妙な模様が刻まれており、その裏には何か不吉なメッセージが隠されているような気配があった。劇団員たちは再び恐怖に包まれ、ひまわり座は完全に混乱し、解散の危機に直面する。


 真琴は、吉田がこの事件に関わっていると確信し、彼を追い詰めようとするが、警察も吉田には証拠をつかめずにいた。吉田の手腕の巧妙さと彼の背後にある謎の力が、次第に明らかになる。何人もの証人が、吉田の周囲に奇妙な動きがあったことを証言するが、決定的な証拠は見つからない。


 その後、劇団のある夜、真琴が楽屋で一人でいると、突然舞台から不気味な音が響き渡る。真琴はその音を追い、舞台の幕の向こうに隠れている物陰を見つける。そこにいたのは、あの「オペラ・ゴースト」とも言える存在、実は吉田の影響を受けた新たな怪人だった。


 その男、佐藤拓海(劇団の元メンバー)は、吉田の指導に従っていたが、次第にその狂気と力に飲み込まれ、真琴を試すかのように恐ろしい手紙を送ったり、巧妙に劇団の内部分裂を煽るなど、背後で暗躍していた。拓海は、吉田に強い忠誠を誓い、真琴を完全に壊すことを目的としていたのだ。


 拓海と真琴が対峙したその瞬間、舞台に立っていた他の劇団員たちが、彼らの争いを止めるために集まるが、どこかから響く一つの声が彼らを動かす。「お前たちは一体何をしている? それが本当の舞台か?」


 その声を発したのは、吉田真治自身だった。吉田は完全に劇団を支配し、彼自身の「オペラの怪人」として再び立ち上がり、彼の世界を作り出していたのだ。


 劇団は、吉田の手のひらで翻弄され、再び崩壊し始める。真琴は、ついに劇団の再生を諦めることなく、最後の戦いを決意する。しかし、彼女がその戦いに勝つためには、吉田と拓海の両方を打破しなければならない。


 そして、悲劇の幕はさらに深く、静かに下りていくのであった。



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