このクソみたいな世界🗺️ カクヨムコン10万字 5万字まで善人。以後悪人編。悪行＝魔法

第3話 劇団「ひまわり座」の舞台裏

　栃木県ひまわり町にある小さな劇団、「ひまわり座」では、地域の演劇ファンたちに支えられながらも、表向きには明るい雰囲気を漂わせていた。しかし、その舞台裏には、誰もが目を背けたくなるような暗い現実が広がっていた。

「ひまわり座」の新しい劇団長、吉田真治（45歳）は、過去に数々の舞台を成功させてきたベテランの演出家だった。しかし、最近はその態度に厳しさと独裁的な傾向が見え始め、劇団員たちとの関係はぎくしゃくしていた。特に若手の俳優やスタッフたちには、その厳しさが耐え難いものとなっており、次第にパワーハラスメントが横行するようになった。

　そんな中、劇団に一昨年加入した若手女優、河合真琴（23歳）は、芸能界に夢を抱きながらも、どこか不安を抱えていた。真琴は、演技力に自信を持ち、ひまわり座での新たなチャンスに期待を寄せていたが、初日のリハーサルで吉田劇団長の厳しい言動に驚く。彼はすぐに指導という名の下で、厳しい言葉を浴びせかけ、さらに真琴に対して身体的な要求をしてくることが増え始めた。

　ある日、リハーサルでの過剰な指導が続いた後、真琴はついに堪えきれず、楽屋の隅で泣き崩れてしまう。彼女は、吉田の意図が単なる演技指導の範疇を超えて、精神的・肉体的な圧力となっていることに気づくが、その恐怖から誰にも言えずにいた。

　真琴が泣いている場面を目撃したのは、ベテラン俳優の田村慎一（38歳）だった。彼はかつて、吉田劇団長の指導を受けたことがあるが、その厳しさと暴力的な側面に長年苦しんでいた。田村は、真琴が吉田から受けている圧力がただの演技指導ではないことに気づき、彼女を支えることを決意する。

　田村は、真琴に声をかけ、劇団内で起きているパワハラの実態を告げる。「君は一人じゃない、俺たちには過去に同じような経験をした者が何人もいる」と、彼は語る。田村は、吉田が新しいメンバーや若手俳優をターゲットにして、精神的な支配を強める常習犯であることを明かし、真琴に警告を与える。

　しかし、田村の告白を聞いた真琴は、次第に心を閉ざしていく。彼女は、自分が劇団にとって重要な役割を果たしつつあることを理解していたが、同時にその代償として吉田に支配されていく恐怖を感じていた。

　一方、劇団内で問題視されていたパワハラの件について、劇団員たちが集まっているとき、真琴はついにその声を上げる決意を固める。「私は、このままでは役者としても人間としても壊れてしまう」と。彼女は、吉田に対して直接向き合い、パワハラをやめるように訴えるが、その結果、劇団長から反撃を受けることになる。

　吉田劇団長は、真琴の告発を許すことなく、逆に彼女を「問題児」として劇団から追い出すことを決定する。彼は公然と真琴を辱め、他の劇団員たちにもその行動を強要する。劇団内では、真琴に味方する者は少なく、吉田の権力に従わざるを得ない状況が続く。

　そんな中、真琴はついに劇団を辞める決意をする。しかし、その辞職の決断が、ひまわり座にとって決定的な崩壊の兆しを意味することになる。

　劇団員たちは次々に吉田の支配から逃れようとし、ひまわり座は分裂を始める。劇団の存続が危ぶまれる中、田村は自らを犠牲にしてでも、劇団の立て直しを図ろうと決心する。しかし、吉田の過去の影響力は未だに強く、田村が言い出す改革案は、結局吉田の反発を招き、劇団内での対立は激化するばかりだった。

　ひまわり座が崩壊寸前になったとき、劇団員の中で一人、再び立ち上がる者が現れる。それは、かつて吉田に育てられ、今ではすっかり大人になった若手俳優、佐藤拓海（27歳）だった。拓海は吉田の指導を受け、成功を収めてきたが、パワハラの実態に対してもずっと疑念を抱いていた。

　拓海は、吉田に立ち向かう覚悟を決め、劇団員たちに向けて声を上げる。「俺たちが変わらなければ、この劇団は終わる。吉田に支配されることなく、俺たち自身で未来を作り上げよう」と訴える。

　その後、拓海を中心に新しい劇団が立ち上がり、ひまわり座の元劇団員たちも参加することを決める。真琴もその一員として、再び舞台に立つことを決意する。吉田の影響を受けずに、自由で平等な劇団を作り上げるために、彼らは一歩を踏み出すのだった。