『タオラロスの12人』は、十二星座に導かれた少年少女たちが、見知らぬ星の大地で少しずつ自分自身と向き合っていく、心に沁みる成長の物語です。
授かった異能の力や、神々からの神託という重圧に戸惑いながらも、それぞれが“誰かと共に在る”ことの意味を見出していく姿が、とても丁寧に、優しく描かれています。
なかでも心に残ったのは、ゼウス神殿でのマルセロの祈りの場面。
造られた月の光に照らされながら、自分の弱さや言葉にならない感情と静かに向き合おうとするその姿は、読むこちらの胸にもそっと届いてきました。
仲間とのすれ違い、葛藤、時には苛立ちも抱えながら、それでも前を向こうとするその一歩一歩に、何度も励まされます。
この物語は、ただの異能ファンタジーではありません。
“ここにいる”こと、“生きている”ことの実感を、やわらかく、でも確かに、教えてくれる優しい旅路です。