死と師との出会い

見渡す限りの原っぱに突っ立っって感じの

「え、私死んだはずだよね。」


確かに死んだはずだった。

でも見渡す限り細長い緑の植物が絨毯のように広がっている。

風のあおりを受けてざわぁと心地の良い音も耳に入る。


「転生ってそんなベタな・・・。」


「これって転生かよ!!!!」


くそうるさい声に思わずイラつきと好奇心で目が向いてしまう。

そこにいたのは明らかにチャラそうで頭が空っぽそうないかにも人生楽しんでます!!って感じの私と同じくらいの男子だった。


これだから陽キャ嫌いなんだよなとぼんやり思っていると後ろから唐突に声をかけれらる。


「いいか、一歩も動くな、死ぬぞ。」


あまりにもドスのきいた声で私の体は強張り、言われなくても動けなくなった。

そんな私を気にせず、男は言葉を続ける。


「あぁ、それでいい。いいか、あの男はあきらめろ。」


なぜ?と疑問に思い浮かぶ前にその理由がすぐに分かった。

草むらの中から突如として水の塊みたいなものがその男子の顔にまとわりつく。


思わず小声だが、漏れてしまう。


「スライム・・・?」


するといまだに私の後ろにいる男が冷静に解説をしてくれる。


「それくらいのことは知っているのか。そうスライムだ。声と動きに反応する。ああやって生き物の呼吸器官にまとわりつき窒息させた後に液状の体で獲物を包み込んで消化するやっかいな生き物だ。」


スライムって雑魚的じゃないの?

と一般的な質問は飲み込む。

もし雑魚的ならこんなところでやりすごす必要もないからだ。


「スライムを狩るならネズミや虫といった小動物に毒を流し込んで、そいつを捕食させないとな。斬っても斬れんし、打撃系も衝撃が分散しちまう。」


魔法というものはないんだなと心の中で思ったのは内緒にしておく。


そうこうしているうちに男子は倒れ獲物を狩ったスライムは勝ち誇ったように亡骸の周りを飛び跳ねている。


「あれは仲間を呼んでいるんだ。この隙に逃げるぞ。ついてこい。」


そこでようやく男を見る。

後ろ姿ではあるが。


筋骨隆々な体に無数の傷跡、長そでのシャツをまくっており、日に焼けた黒さが目立つ。

ズボンは何年も履いて擦り切れているのと汚れがすさまじい。


現代のリュックには遠く及ばないが、それらしきものを背負っている。

そのリュックはぱんぱんになっており、脇にはクロスボウが、反対側には斧がかけられている。


総重量は相当のはずにもかかわらず、その足取りは異様に早いうえに静かで追いつくのがやっとだ。


体感でどれくらい歩いているだろうか。

景色がさっきまでのありふれた自然からぽつぽつと人口の建物が増えていき、次第におその数が増えていく。


建物が増えていくとともに人通りも増え、気が付けば大きな街に入り込んでいた。


「お前さんが行くべき場所はまずはここだ、縁があればまた会うだろう。」


そう言い残し、私の命の恩人であるその男は大荷物にも関わらずするすると人の間を縫うようにあっという間に見えなくなってしまった。

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伝説の冒険者への道 ネルシア @rurine

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